■【独占インタビュー】ベテラン刑事役キム・ヒウォン、役作りにあたって大切にしていること
ーー最初に脚本を読んだ時の印象は?
私自身も振り込め詐欺の電話を受けて腹立たしく思った経験があるので、世の中にはこんなことでお金を稼ぐ人たちがいるのかと憤りを感じながら読みました。実際に電話を受けた時のことを思い出すと、詐欺だとは気付きませんでした。彼らは非常にソフトに話しながらも、相手を怖がらせて恐怖心を与えます。私が騙されなかったのは、お金がなかったからだと思います。電話を受けた時に暗証番号や個人情報の詳細、お金に関する話が出たら、すぐに電話を切らないといけないと思います。
ーーこれまで多くの作品で、犯罪者の役を演じてこられましたが、今回、演じたギュホは、詐欺犯の元締めを逮捕しようとする警察の責任者です。役を演じるにあたって工夫したところ、苦労したところはありますか?
犯罪者の役も警察の役も、同じだといつも考えています。たとえば、連続殺人犯がニュースに出たときに「自分の隣に住んでいる人だった」と知ったら、非常に怖いですよね。逆に刑事が「隣に住んでいる人だった」とわかった場合は、親近感を覚えると思います。ですから、犯罪者も刑事も人間だと考え、演じる時は人間の本質に迫ろうとします。『声/姿なき犯罪者』では、現役の刑事さんたちにノウハウを聞いて役作りをしました。
ーー具体的にはどんなアドバイスを受けましたか?
「なるほど」と思ったのは、特殊詐欺の特異性でした。映画の中にも出てきましたが、この犯罪では、被害を受けた人たちが「自分のせいで騙された」と自分を責めてしまうというんですね。そのことにとても大きな怒りを感じました。高額の被害を受けた人の中には、自ら命を絶ってしまう人もいます。そうした被害者の方の特殊性が、最も印象に残っています。