■『あなたが願いを言えば』見どころ、チ・チャンウクが今までとは違う役に

 ツンデレから寡黙な守る男までナチュラルな大人のモテ男がハマるチ・チャンウクだが、本作で演じたギョレは、本人曰く「外見的にも情緒的にも、これまでの役にはなかったタイプ」。養護施設から少年院、刑務所と、世の中の底辺を生きてきた、いわゆる“チンピラ”だ。

 人生に対して無気力で、人に対しても壁があり、荒っぽい態度。見た目はどうしようもないギョレだが、その眼差しはさみしげで心の傷があることは明らか。 とりわけ、飼い犬の「アドゥル(息子)」を抱きかかえ慈しむ眼差しのピュアさたるや! 身体は大人で口調は乱暴だが、まるで子犬を可愛がる幼気な子供のように見え、「この男、気にならざるを得ない!」なのだ。

 粗雑さのなかでふいに見せる表情、仕草、口調には、悲しさややるせなさと同時に、心根の優しさ、純粋さが浮かび、チャンウクの繊細な表現に1話から惹き込まれてしまう。

 出会って早々に、ギョレの愛車に飛び蹴りを食らわす“武闘派”看護師ヨンジュを演じるスヨンとの相性もいい。ギョレとヨンジュ、表現は荒っぽいが、心の温かい者同士が、不器用に心を近づけていく様は、爆笑あり、微笑ましくもあり、見ていて幸せな気分にさせられる。

 もう1人、ギョレの人生を大きく変えていくきっかけになるのが、ボランテイアチームのチーム長、テシクだ。演じるのは、『応答せよ』シリーズで知られる名優ソン・ドンイルで、ギョレを時に厳しく、時に温かに見守る“父親”のような存在を担う。なかなか正直になれず、軽口を叩きながら互いを案じ合う2人の、師弟のような、父子のようなやり取りに胸が熱くなること請け合いだ。

 孤独に生きてきたギョレが、ヨンジュやテシクをはじめ、ボランティアチームの人々の情愛に触れ、少しずつ心を開いていく、“少しずつ”の感じがとても良く、演技者としてのチャンウクの才を感じさせる1本になっている。

「痛みや苦しみは隠したり、耐えたりするものではない。知らせて理解してもらうものよ」というヨンジュの言葉に救われるギョレ。

 死を前にした患者たちのエピソードもそれぞれに考えさせられるものがあるが、何より「生きることを放棄した」ギョレが、「生きてきた思い出」を尊ぶ患者たちに接することで、「死」ではなく、「生」を見つめ、人生に希望を見出していく様が心を打つ。素直な心で人々の痛みに共感し、誰かを救う人となっていくギョレを通して、心に灯りがともるような感動作だ。

©2022, Lifetime Korea, LLC. All rights re

●配信情報

『あなたが願いを言えば』(全16話)

U-NEXT独占配信 https://video.unext.jp/
配信開始日:2023年1月1日(日)12:00
価格:各440円(税込)/視聴期間:3日間

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