どこか神秘的な雰囲気のあるシン・セギョンも、アスダル王国の大祭官タニャがとても似合っていた。タニャはウンソムとサヤの想い人になるが、個人的にはそれよりも、テアラとのやりとりが印象に残る。

 アスダル王国の王妃テアラを演じたのは、今年は『その恋、断固お断りします』でも注目されたキム・オクビン。何よりも自分の欲に忠実なテアラと、迷いながらも神事に身を捧げるタニャは、似ても似つかないが、2人ともカリスマ的でありながらも人間味がある。その争いは終盤ピークを迎える。

 最後までウンソム率いるアゴ連盟と闘いを繰り広げるアスダル王国の王タゴンを演じたチャン・ドンゴンも、見せ場たっぷりだ。シーズン1では太古の土地アスに国が存在しなかった頃から青年タゴンが王になるまでが描かれたが、シーズン2はその8年後から始まる。古代国家初の王になった男の圧倒的なオーラ、トラウマ、苦悩、暴力性……。そんな多面性をもつタゴンを、チャン・ドンゴンが多彩な顔を見せて熱演する。

 一方で、世間では懸念されていた主演2人の交代は逆に功を奏した感があったが、脇役陣の変更は少し残念ではあった。シーズン1は、振り返ってみれば、その後人気になった脇役俳優陣がそろっていた。イプセン役の『その年、私たちは』のキム・ソンチョル、ギルソン役の『愛と、利と』のパク・ヒョンス、ヨンバル役の『私たちのブルース』のチェ・ヨンジュンなどが、シーズン2になって降板している(シーズン1はネアンタル役で2PMニックンも出演していた)。

 とはいえ、終盤に入ると物語がトーンダウンしてしまう韓国ドラマが増えている中、本作はラストまで勇壮に丁寧に描かれていた。まさにひとつの神話が生まれた瞬間に立ち会えた気にさせられた。韓国ドラマに新たな世界を作り上げた意欲作として記憶されていくのは間違いないだろう。個人的にも、今年の1本に挙げることになると思う。

●配信情報

『アスダル年代記:アラムンの剣』シーズン2

ディズニープラス スターにて独占配信中

[2023年/全12話]演出:キム・グァンシク 脚本:キム・ヨンヒョン、パク・サンヒョン

出演:イ・ジュンギ、シン・セギョン、チャン・ドンゴン、キム・オクビン