架空の土地アスを舞台に描いた太古ファンタジー『アスダル年代記』のシーズン2が、『アスダル年代記:アラムンの剣』として4年ぶりに放送された。日本ではディズニープラス スターにて独占配信中だ。

 シーズン1が神話でいうところの創世記だとすると、シーズン2は戦記といえるのかもしれない。とにかくこれまでの韓国ドラマにはなかった壮大な叙事詩で、ほかに同じものがないので時代劇枠で紹介されるのは仕方ないが、普通の時代劇と同じと捉えられてしまうのは何とももったいない。

 こうした神話的なハイファンタジーの作品といえば『ロード・オブ・ザ・リング』などを思い出す。その西洋的な世界観を韓国で作ってしまおうという意欲だけでもすごいと、シーズン1のときから感動したものだった。

■神話的ファンタジー『アスダル年代記:アラムンの剣』見どころ、主演イ・ジュンギのアクションの魅力

『アスダル年代記』シーズン2の大きな目玉は、主演4人のうち、2人が変わったことだ。

 ソン・ジュンギが演じていたウンソムとサヤ(一人二役)にイ・ジュンギキム・ジウォンが演じていたタニャにシン・セギョンがキャスティングされた。

 また、シーズン1では、『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~』『シグナル』のキム・ウォンソク監督が演出を務めることで話題になったが、シーズン2は『安市城 グレート・バトル』のキム・グァンシク監督が演出を担当。同映画の戦場シーンも見事だったが、本作もアクションの面白味が誠実に追求されている。

 脚本家は、『善徳女王』『根の深い木』『六龍が飛ぶ』といった時代劇の名作を生み出してきた黄金コンビ、キム・ヨンヒョク&パク・サンヨン。シーズン1では「わかりにくい」という声もあったため、シーズン2はできるだけストーリーをすっきりさせるよう意識したという。確かに大枠は、アスダル王国とアゴ連盟の闘いが中心に置かれ、単純にはなった。

 だが、アスダルという生まれたばかりの国の混乱も仔細に描かれ、ひとつひとつのセリフやエピソードも一ひねり二ひねりされている。シーズン1でもそうだったが、韓国の現代的感覚を極力排除し、普遍的で原始的な人間の欲望や感情を忠実に描こうという気概がそこここに感じられる。

 4人の主演俳優が、代表作と呼んでいいほどの熱演を見せているのも見どころである。

 なかでもイ・ジュンギは、シーズン2から参加したとは思えないほど、ばっちりハマっていた。本作には、多くの部族とともに、ネアンタルという超人的な能力をもった人間とは違う種族も登場する。イ・ジュンギが演じるウンソムとサヤの双子は、そんなネアンタルと人間のハーフである“イグトゥ”という存在だ。

 ハーフといえど超人的な能力を受け継いだウンソムは、その勇敢さから、約30の氏族で構成されるアゴ族の“イナイシンギ”と呼ばれるリーダーとなる。特に戦場の場面では、アクション俳優ともいえるイ・ジュンギの本領が発揮される。馬上からジャンプして弓矢を放つシーンが素晴らしい。顔つきも、何と神話的ファンタジーにぴったりなのだろうか。ちなみに、サヤは、アスダル王国の国王タゴンに拾われ暗い塔の中で育てられた、ウンソムとは対を成す双子の兄弟である。