■韓国民主化運動の象徴「光州事件」の痕跡がある「全日ビルディング245」

 チョン・ドゥグァンのモデルとなった全斗煥元大統領といえば、「5.18民主化運動」(いわゆる「光州事件」)が勃発するきっかけとなった人物である。

 軍を掌握した全斗煥による軍事政権に反発し、学生たちを中心に民主化を求める運動が蜂起した。これに対し、1980年5月18日から27日にかけて、軍は、当時全羅南道の道庁所在地だった光州(クァンジュ)市に空挺部隊を投入、大学を封鎖した。 

 対抗した学生たちを鎮圧するために、厳戒軍は、一斉射撃を行うなど、一般市民をも巻き込む無差別残虐行為を繰り返し、大勢の市民が負傷し、命を落とした。

「5.18民主化運動」については、ソン・ガンホ、トーマス・クレッチマン主演の韓国映画『タクシー運転手 約束は海を越えて』や、チェ・ミンスコ・ヒョンジョン主演のドラマ『砂時計』でも描かれている。

 韓国南西部にある光州広域市内には、「5.18民主化運動」にまつわる30あまりの施設がある。その中のひとつ、旧全羅南道庁前の民主広場の向かいにある「全日ビルディング245」を訪ねた。

 1980年当時、このビルには光州日報社(旧・全南日報)と全日放送が入居していたことから戒厳軍の標的となり、ヘリコプターから245発もの射撃弾が撃ち込まれたことが、後日の調査で明らかになった。

 現在、同ビルの9、10階は「5.18記念空間」として開放されており、壁や床の弾痕や、打ち抜かれて穴が開きヒビが入った窓ガラスが、当時のまま残されている。

「5.18民主化運動」の舞台となった光州にある「全日ビルディング245」には、ヘリコプターから撃ちこまれた245発の射撃弾の痕跡が残されている
「全日ビルディング245」の9,10階は「5.18記念空間」として開放され、「5.18民主化運動」の映像や写真なども展示されている

●光州広域市へのアクセス

ソウル・龍山駅から光州松汀駅までKTXで約1時間55分。