WORLD WIDE GANG REPORT

VOL.1 アルメニアンパワー

 アメリカのストリート・ギャングといえば、まずイメージするのは「クリップス」、「ブラッズ」に代表されるカラーギャング(*注1)だろう。しかし、アメリカには他にも多種多彩なストリートギャングが存在する。今回紹介するのは、その中でも異質な存在感を放っている集団「アルメニアンパワー」だ。

*注1 バンダナやシャツから車の塗装など、特定のカラーで統一しているストリートギャング。クリップスは青、ブラッズは赤。両者は1970年代から続く長い対立の歴史を持っている。90年代に日本にも出現したカラーギャングは彼らのファッションを模倣していた。

 創始者は、1974年生まれのアルメニア“サイレント”ペトロシアン。1989年、15歳でアルメニアからアメリカのイーストハリウッドに移住し、他の移民系ストリートギャングに対抗するために友人と共にアルメニアンパワーを結成。1990年代半ばのピーク時には、約120人のメンバーを擁する集団へと成長した。

 日本における中国残留孤児を中心とした半グレ集団「怒羅権」のように、異国から移住した若者たちが、自分たちの身を守るために作った集団がやがてギャングへと変貌する、というのは自然のなりゆきなのかもしれない。

 2000年に創始者のペトロシアンは対立組織のメキシコ系ギャング、スレーニョスのメンバーによって射殺された。アルメニアンパワーは同年、17歳のメキシコ系アメリカ人を殺害したが、両者の間で対話が行われ、アルメニアンパワー側は名前にメキシコ系マフィアへの忠誠の証「13」を追加し、傘下に。メキシコ系マフィアの連合体であるスレーニョスにみかじめ料を払うことで合意し、両者は協力関係になった。グループ名は「AP」「AP13」などとも略される。