■「グリーンベレーの教育」と「アメリカの失策」で組織が急成長

 1990年、エルサルバドルの特殊部隊の元メンバーであり、パナマでアメリカのグリーンベレーによって訓練を受けた経験を持つエルネスト・デラスが指導者になると、組織が凶悪化。当初は友好関係だったメキシコ系のエイティーンス・ストリート・ギャング(18th Street Gang)ともこの頃から関係が悪化した。

 1992年にエルサルバドル内戦が終結すると、アメリカはロサンゼルスで逮捕されたMS-13のメンバーを本国に強制送還するようになった。だが皮肉なことに、このアメリカの政策がMSー13を急成長させることになったのだ。

 それまで本国でギャングの活動は目立っていなかったが、内線で疲弊したエルサルバドル国内でMS-13が多くのメンバーを募集。戦後の混乱でしっかりした警察組織が存在しない間にMS-13は国際的な犯罪組織へとさらに成長し、内戦で残された武器を密売。これが現在まで重要な収入源になっているという。

■リーダーは本国で懲役1090年の刑に!

 対立するエイティーンス・ストリート・ギャングもエルサルバドルで勢力を拡大し、抗争が激化。刑務所の中だろうとお互いに殺し合ってしまうため、刑務所はエイティーンス・ストリート・ギャング専用と、MS-13専用に分けられている。

 MS-13による凶悪な犯罪は挙げたらキリがないが、2022年にエルサルバドルで逮捕されたリーダーの1人であるセサル・アルフレド・ロメロ・チャベスは24件の殺人で有罪判決を受けた後、1090年の禁固刑を言い渡された。

 ドナルド・トランプ前大統領は、MS-13の存在を重要な問題と捉え、その責任は民主党にあると非難。MS-13に対処するための厳格な移民政策を求めた。エルサルバドルから陸路でアメリカをめざすには、メキシコを経由する。メキシコとアメリカの国境に「トランプの壁」の建設を強引に進めたのは、MS-13の悪行の影響もあったのだ。