ノーベル賞を受賞した旧人類の遺伝子研究

 今年のノーベル賞も出揃いましたが、日本人の受賞者はおらず、あまり報道も盛り上がらないまま収束してしまったのは残念ですね。しかし、奇談好きにとっては日本人ではなくても今年のノーベル賞にはは気になる受賞者がいます。
 我々にとって今年もっとも注目すべき受賞者は、生理学・医学部門のスウェーデン出身のスバンテ・ペーポ博士です。ドイツの研究機関の所長を務め、長年に渡って絶滅した人類の遺伝情報を調べてきた博士は、約30,000年前に絶滅した別の人類・ネアンデルタール人のゲノム解析に成功し、私たち人類の種ホモ・サピエンスとも交わりを持っていたことを明らかにしました。

スバンテ・ペーポ博士(クリエイティブ・コモンズ)

旧人類同士は幾度も交配を繰り返していた

 ペーポ博士は、2008年にシベリアで発見された未知の人類の化石をDNA解析によって『デニソワ人』と特定したことを2010年に発表したでよく知られています。ホモ・サピエンスとすでに知られていたネアンデルタール人に次ぐ“第3の人類”と話題になりました。
 その後、ペーポ博士率いるマックス・プランク進化人類学研究所は、約9万年前の骨のかけらから、その本人がネアンデルタール人の母親とデニソワ人の父親の間に生まれた10代の少女のものであることを突き止めています。