■脊椎動物長寿ナンバーワンは北の深海に棲むニシオンデンザメ

アメリカ海洋大気局が捉えた生きたニシオンデンザメの貴重な画像

NOAA Okeanos Explorer Program, Public domain, via Wikimedia Commons

「鶴は千年、亀は万年」ということわざもあるが、「長寿」は昔から人の興味をそそるもの。どれだけ富や権力を手に入れても、命の長さだけは限界がある。秦の始皇帝「不老不死」を願って水銀入りの薬を服用し、かえって死期を早めたと言われる。

 人類で一番長く生きたのはフランスのジャンヌ・ルイーズ・カルマン氏で、その年齢は122歳164日。一番長く生きた(ている)亀は現在セントヘレナ島に暮らすジョナサンで、現在190歳。

 グリーランドの近辺の深海に生息するニシオンデンザメの最も高齢の個体は放射線年代測定法によって392±120歳(272~512歳)と推定された。現在、脊椎動物の中で最も長寿なのは、このニシオンデンザメだと考えられている。

■さらに長寿な動物はなんと「貝」しかも食用!

世界最長寿の生物だったアイスランドガイが生まれた時代、中国・明の皇帝、朱元璋(ちょっと顔が牡蛎っぽいw)/ウィキメディアコモンズより

 2006年、アイスランド沖で捕獲された約200個のアイスランド貝の中から、群を抜いて古い個体が見つかった。貝は冷凍されて陸地に運ばれたため、捕獲時点で死亡した。当初は405歳から410歳とされていたが、後に507歳と判定された。

 この貝は、産まれた1499年が中国の明の時代にあたることから、明(ミン、Ming)と名付けられた。始皇帝が亡くなった紀元前210年から、1709年後に誕生したことになる。クリストファー・コロンブスがアメリカ大陸を発見したのが1492年。明はフランシスコ・ザビエルより7歳、織田信長より35歳、豊臣秀吉より37歳、徳川家康より44歳年上という計算になる。

■これだけ貴重な貝なのに実は食用

あなたが食べていたクラムチャウダーの貝。実は激レアな長寿の貝だったかも?

 アイスランドガイは非常に長生きで知られる種類で、その年輪は古気候の推定に利用されている。年輪の幅から、小氷期や、噴火による平均水温の低下が反映されていたことが確認されている。

 その一方でこの貝は、北大西洋沿岸地域では一般的な食用二枚貝で、商業的に捕獲されている。明の貝殻のサイズは87mm×73mmで、平凡なアイスランド貝と見分けのつかない大きさと見た目だった。

 ワイン蒸し、クラムチャウダー、パエリア……明よりもっと高齢で貴重な貝が誰かの胃袋に収まっているの可能性は高そうだ。