■『鎌倉殿の13人』の“ネタ本”には奇妙な記述が…
源頼朝(演・大泉洋)が挙兵した頃から、往年の大河ドラマ『時宗』の主人公・北条時宗(演・和泉元彌)が登場するあたりまでの鎌倉幕府にまつわる記録をまとめた『吾妻鏡(あづまかがみ)』。今回の大河『鎌倉殿の13人』でも、ここから細かなエピソードが拾われドラマを彩ってきた。いわば”ネタ元”と言える史料だ。
この『吾妻鏡』幕府中枢の人々がまとめた公式文書のようなものなのだが、実は、私たち現代の人間からすると「これ、公式文書に残すようなこと?」と首を傾げるような事件も数々載っているのだ。
■蝶に鷺に鳩、果ては犬のクソまで……鎌倉殿をビビらせた怪異
例えば以前の記事で紹介した「仁田忠常の洞窟探検隊」のような都市伝説っぽい話から(まあ、これは二代鎌倉殿・頼家の命令だったから仕方ないか)、鶴岡八幡宮に黄色い蝶の大群が出現(文治二年/1185/5月1日の記事ほか)、御所に青鷺(あおさぎ)が侵入したので生け捕りにした(承元元年/1207/12月3日)、鶴岡八幡宮で鳩3羽が嚙みつき合って落下。うち1羽が死亡(建仁三年/1203/7月4日)などなど。
その度に「これは凶兆だ!」と祈祷(きとう)をしたり、祭礼を行なったりと幕府関係者は右往左往。果ては「鎌倉殿の座る畳の上に犬のクソが! これは病の凶兆!!」と陰陽師から上申書が提出される騒ぎに。いや、犬のクソって……野良犬に入り込まれウ〇コされるような、ガバガバのセキュリティのほうがむしろ心配。
■源頼朝の頭上をUFOが飛んでいた!
蝶だの犬のクソだのまでは、まあ自然現象だし、それを凶兆と感じるのは当時としては常識だったのだろうと理解はできる。しかし、『吾妻鏡』にはさらに「前脚が4本、後ろ脚が5本の異形の馬が発見された」「諏訪湖に突如、島と唐船が出現した」「牛のような化け物が現れ、目撃した4人が死亡」などなど、われらが東京スポーツの見出しか!? と二度見するような記事も載っているのだ。
そしてここからが本題。そうした怪異記事の中でも、われわれ電脳奇談編集部が注目するのが「光物(ひかりもの)」。『吾妻鏡』の本文中で12カ所の記述がある謎の発光現象のことだ。
例えば、最初の「光物」記事は、寿永元年(1182)6月20日、「戌の刻。鶴岡の辺りに光物あり。前浜(注1)の辺りを目指して飛行す。その光数丈(注2)に及び、暫く消えず」とある。
注1/現在の由比ガ浜。鶴岡八幡宮から見て南方。注2/一丈は約3メートル
戌の刻つまり夜の19時~21時頃、数メートル~十数メートルの大きさの光る謎の物体が南に向って飛行したというのだ。もう、はっきり言おう、UFO(未確認飛行物体)だ。最近の米政府にならうなら「未確認航空現象(UAP)」でもいい。源頼朝の頭上を謎の発光物体が飛んでいたのだ!