■聖典『バガヴァット・ギーター』とは何か

『マハーバーラタ』は、古代インドの伝説的な王子たち5人の兄弟にまつわる戦争を描いた叙事詩で、『バガヴァット・ギーター』にはその登場人物たちの対話という形でヒンドゥー教の真髄が記されています。
 全18巻ある『マハーバーラタ』の中、第6巻の一部分という限られた分量ではありますが、『バガヴァット・ギーター』単独でヒンドゥー教の重要な教典のひとつとされます。文書として現代にまで伝わる原形が紀元前2世紀ごろには成立していたようです。

クリシュナとアルジュナの対話。 (Wikimedia Commonsより)

 スナク氏は2017年に国会議員に選出され、一般的には『聖書』を用いる宣誓式を、この『バガヴァット・ギーター』に手を置いて行いました。イギリスはキリスト教国ですから、この行為は当然ながら多くの国民から反発されました。
 当時スナク氏は抗議の声を受けて、自身がヒンドゥー教徒であり、それがアイデンティティーだとコメントしています。その毅然とした態度はインド国民に感銘を与えました。彼の執務机には、象の頭を持つインドの神、ガネーシャ像が置かれているといいます。

 

■スナク氏の名前に秘められた意味

 彼の名「リシ」は、サンスクリット語で「悟りを得た人」を意味します。「賢者」や「聖人」のニュアンスを含み、同じインド発祥の仏教でいえば「仏陀」にあたる言葉ですから、日本でもその名前からインドの人々が抱く期待は想像できるのではないでしょうか。
 スナク氏は結婚しており、ふたりの娘がいることが知られていますが、そのひとりには『バガヴァット・ギーター』に登場する神の名がつけられているそうです。

 

 現在、最もホットな話題のひとつとして最新の動向が報道されているイギリス新首相。日本では政治の話題よりも、映画俳優になっていてもおかしくなさそうなイケメンであることや、世界でも有数の富豪ぶりで注目されそうです。

 

■おまけ:今、インドといえば……

 イギリス新首相が決まった時、日本では折しも大ヒットしたインド映画『バーフバリ』シリーズのラージャマウリ監督の最新作『RRR』の公開開始直後でした。

『RRR』は1920年のイギリスの植民地だったインドを舞台とした物語なので、イギリスとインド両国の関係性を知る上でも見ておくと参考になるかもしれません。また、インドの神話的叙事詩『マハーバーラタ』や『ラーマーヤナ』の要素が散りばめられているところも注目したい映画です。