古代遺跡とエーゲ海の絶景を楽しむ観光立国ギリシャ

 古代の神殿遺跡で名高いアテネの都は、経済的に大きな問題を抱えたギリシャ共和国にとってなくてはならない観光資源です。世界的にもよく知られている「ギリシア神話」と関係する遺跡を見るために、世界中から観光客が集まります。もちろん、新型コロナさえなければ、日本人もたくさん訪れています。
 ギリシア神話は夜空の星座の伝説にもなっていますし、日本でも比較的よく知られています。エーゲ海に面した崖の上に建つパルテノン神殿が、アテネ(アテナイ)の守護神である女神アテナを祀った宗教的な建物であることはご存じの方も多いでしょう。

在りし日のパルテノン神殿のイメージ画。実際には彫刻等は

カラフルに着彩されていた。(Jossilene JoB)

 ちなみに、ギリシャは「ギリシア」とも表記しますが、どちらが間違いことではなく、使い方にも明確な規定はありません。ここでは、「古代ギリシア」や「ギリシア神話」といった歴史的な用語として「ギリシア」、「ギリシャ共和国」など現代については「ギリシャ」と区別しています。

 

紀元前から数千年もの間語り継がれてきたギリシア神話

 ギリシア神話には主神ゼウスを筆頭に、数多くの神々が登場します。古代ギリシアは『ポリス』と呼ばれる都市国家単位で守護神が決まっていた、職業別や家庭等で祀る神がいて、それぞれの立ち位置で崇めるべき神に祈りを捧げていました。こうした信仰形態は日本でよくいわれる“八百万の神々”に近いので、日本人にはわかりやすいといえるでしょう。
 神に祈る際は、祭壇などで供物を捧げ、どのような加護を求めるのか訴えるのですが、対象の神が司る限定的な効果を期待する意外とビジネスライクな関係で、仏教やキリスト教とはイメージが異なります。大都市では毎月のように神々を祀る儀式に参加していました。

 

■神話に根差した古代ギリシアの宗教儀式

 そんな中でも、特に規模の大きな祭りが毎年のこの時期、10月下旬から11月上旬にかけて行なわれていました。『テスモフォリア』と呼ばれるその祭りは、主に農業による実りをもたらす女神デメテルに供物を捧げるための祭りです。彼女と彼女の兄弟であるゼウスとの娘、コレー(ペルセポネ)も供物を捧げる対象に含まれますが、祭りの名称はデメテルの別名テスモフォロスに由来しています。
 テスモフォリア祭はアテネを中心とする広い地域で行なわれる、女性だけが参加できる盛大なお祭りでした。3日間に渡って既婚の女性たちが共に過ごす儀式では、豚を供物として捧げ、断食とともにデメテルの物語を再現。最終日は様々な料理で祝い、穀物が豊かに実ることと多くの子宝を得ることを祈りました。

フランシス・デイビス・ミレーによる「テスモフォリア」

(ブリガム・ヤング大学美術館)