■「最もダサい髪型」として歌にもなったヘアスタイル

 かつてアメリカのヒップホップグループ、ビースティ・ボーイズが1994年に発売した曲「mullet head」の歌詞で「最もダサい髪型」として標的にした“マレットヘア“をご存知だろうか? サイドとトップは短めで、後ろ髪だけを伸ばすスタイルで、70年代から80年代にかけて流行した髪型だ。

 テニス選手のアンドレ・アガシ、映画『リーサル・ウェポン』出演時のメル・ギブソン、映画『ダーティ・ダンシング』出演時のパトリック・スウェイジ、ドラマ『冒険野郎マクガイバー』で主演したリチャード・ディーン・アンダーソン、野球選手のランディ・ジョンソンなどを挙げればイメージできるだろうか?

■ビースティ・ボーイズのせいで90年代に急速に衰退も……

 元々は70年代に襟足だけを伸ばしたデビッド・ボウイの髪型が人気になり、グラムロックの流行とともに世界に広がったと言われている。

 ロックバンドU2のボーカル、ボノがパトリック・スウェイジに「マレットを発明したのは俺だ」と言った、という説もあるが、ビースティ・ボーイズが定義するまで「マレット」という言葉は存在していなかったという。

 そのビースティ・ボーイズが監修した雑誌『グランドロイヤル』で、マレットヘアの著名人などを特集したことで「世界中で最もダサい髪型」と言われるようになり、90年代に急速に廃れてしまったのだ。

Grand Royal Magazine Issue 2の表紙画像

■2020年代に入りTikTokで若者を中心に大バズり!

 日本人でこの髪型をしている代表的な有名人は、プロゴルファーの“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司(75)、プロレスラーの天山広吉(51)、田舎のヤンキーくらいだが、アメリカでは今なお“正統派”マレットヘアー好きも数多く存在する。アメリカではカントリーミュージックのスターや、ホッケーの選手などの白人男性、LGBTQの人々の間でも人気があり、今なお進化を遂げ続けている。

 2020年、コロナ禍によって美容院が数ヶ月間休業した影響で、世界中で多くの人が自分で髪を切らなければならなくなってしまった。「マレットヘア」はサイドとトップを切るだけで後ろ髪を伸ばすスタイルなので、自分でカットすることが可能。この物理的な要因と、TikTokなどのSNSでバズったこと、ドラマ『ストレンジャー・シングス』のヒットのような80年代文化の再評価により「マレットヘア」への注目が集まっている。