■神話の昔から勝利をもたらしてきた八咫烏
快進撃を続けるサッカー日本代表の胸に輝く漆黒のエンブレム「八咫烏(やたがらす)」。日本神話「神武東征」に登場する神の使いに由来することはご存じの方も多いだろう。
神武天皇は大和に攻め込んだものの、兄の五瀬命(いつせのみこと)が戦死するなど逆境に陥り熊野へ転進。そこで神から遣わされた八咫烏の導きで逆転勝利をつかむというエピソード、どこか、ドイツ、スペイン戦の「前半ボッコボコにやられたものの、後半で奇跡の逆転」という展開に通ずるものを感じた方もいるかもしれない(考えすぎかもしれませんが……汗)。
この神話の物語から「勝利をもたらす神の鳥」として、現代にいたるまで崇められてきた八咫烏。実は、日本のインテリジェンス(諜報活動)を担う、陸上自衛隊の情報部隊もエンブレムに八咫烏を使っており、スポーツの世界以外でも、その霊力を敬してきた歴史の一例と言えるだろう。
■日本最古の霊場・熊野の伝説に由来するエンブレム秘話
また、日本代表のエンブレムとなった歴史自体も意外に古い。実は八咫烏が日本代表や日本サッカー協会のシンボルマークとなったのは戦前の昭和6年(1931)のこと。
日本初のサッカークラブ(現在の筑波大学サッカー部)を設立したり、初のサッカー指導書を記した中村覚之助が日本最古の霊場と言われる熊野那智大社近くの出身だったことに関係する(実際に八咫烏をシンボルとして制定したのは日本サッカー協会の前身を創設した中村の後輩たち)。
この熊野那智大社や熊野本宮大社、熊野速玉大社を合わせた「熊野三山」は神武東征に由来する日本最古の霊場なのだが、この地に古くから伝わる「八咫烏の伝説」が興味深い。そもそも八咫烏を神武天皇のもとに遣わしたのは日本最強(そして最恐)の神である素戔嗚尊/須佐之男命(すさのおのみこと)だというのだ!(注1)
ということは、素戔嗚尊の使いである八咫烏をエンブレムにしている日本代表は日本最強の神を守護としていることになる。こんな心強い”サポーター”はいないだろう。
注1/『古事記』や『日本書紀』では八咫烏は賀茂神社の祖となる鴨健角身命(かもたけつぬのみこと)の化身で、遣わしたのも高木大神や天照大神とされている。
■龍殺しの神を守護神としている日本代表ならば……
さて、ここからは来るクロアチア戦に向けた呪術的な(そして個人的な希望や祈りを込めたw)解説。
素戔嗚尊といえば最も有名なエピソードが「八岐大蛇(やまたのおろち)退治」。八つの頭をもつ山のように巨大な龍蛇を機略をもちいて退治した伝説だが、これ、言うなれば素戔嗚尊は日本最初の「ドラゴンスレイヤー(龍殺しの英雄)」となる。
で、ここからが屁理屈呪術的解釈wなのだが、対戦相手のクロアチアを含むバルカン半島では「ズメイ」という名の三つ首のドラゴンが作物や人々を守る「守護龍」として崇められてきたという。西欧では「ドラゴン=悪」という図式が多いのに対し、かなり異例だ。(注2)
注2/正確には雄のズメイが守護者で、雌のズメイは悪神という位置づけなんだとか。
さてさて、勘のいい方はもう(かなり強引な)結論にお気づきだろう。「最強のドラゴンスレイヤー(の御使い)を象徴」とする日本代表と「善なるドラゴンを守護神」とするクロアチア代表、呪術的にはどちらの勝利か決まったようなものだろう(と、祈っておりますw)。
我らが日本代表が、八咫烏の導きの下、歴史的勝利を掴むことを切に願います。