■20世紀後半は「カルト宗教」の時代だった!?
2022年7月8日、元内閣総理大臣の安倍晋三氏(67没)が、選挙演説中に銃撃を受けて死亡した。事件はまだ捜査中だが、実行犯の男(当時41)の母親は、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の熱心な信者で、約1億円を献金するなどの行動で破産し家族の生活が困窮。旧統一教会への恨みから、安倍晋三氏を狙ったとされている。
この事件を受けて、「カルト宗教」に再び注目が集まっている。「カルト」は本来「儀礼・祭祀」を表す宗教用語だった。宗教団体と「カルト宗教」をどう区別するか、は非常に定義が難しいが、現代では「反社会的な新興宗教」を指すイメージが定着している。
日本においては、1988年から1995年にかけて起こった殺人事件や、地下鉄サリン事件を引き起こした「オウム真理教」の記憶がいまだ鮮明だ。
1945年、第二次世界大戦が終了すると、世界各地で新興宗教が勃興。そのうちのいくつかのグループは、「集団自殺」を遂げた。これは「カルトの集団自殺」と呼ばれている。その中でも代表的なのが、以下だ。
■人民寺院(peoples temple)
日本語で「人民寺院」と訳されるキリスト教系のカルト宗教団体、peoples templeは、教祖であるアイルランド系アメリカ人のジム・ジョーンズが1950年代にアメリカのインディアナ州で創設。60年代中頃には人民寺院の本部をカリフォルニア州へ移転。1970年代の中頃には、カリフォルニア州の数十の町に支部を作った。
当初はキリスト教と共産主義をミックスした教義で人種差別や社会問題に積極的に抗議活動を行ない、急速に支持を集めたが、次第に、教祖ジョーンズの神格化が進み「イエス・キリストの再来」などと唱えるようになる。
さらに、心霊手術で治療をすると詐欺行為を働いたり、脱会を求める信者を監禁するなど数々の問題が発覚。アメリカ国内での拡大を危ぶんだのか、1974年に人民寺院は南米のガイアナ共和国で熱帯雨林の土地を借り、「ジョーンズタウン」と呼ぶコミューンを開発。
だが、その後も信者の家族とのトラブルが続出。1978年11月18日、人民寺院を問題視しジョーンズタウンを視察に訪れたアメリカ合衆国下院議員のレオ・ライアンら数人が信者によって空港で殺害され、ジョーンズタウンにいた人民寺院の信者909人がシアン化化合物の中毒によって死亡。教祖のジム・ジョーンズも銃で自殺した姿を発見された。