■触手好き集まれ!スゴイのいたぞ!!

 アニメやSF作品からムフフ映像まで、「触手」という表現が定番になったのはいつの頃からだろうか……?

 かつて天才浮世絵師・葛飾北斎は「喜能会之真通」で美女と巨大な蛸が絡み合う春画を描いたが、日本人の心には昔から「触手」に関するイメージが備わっているのかもしれない。

 ムフフな世界では妄想の話だが、世の中には実際に「触手」を連想させる生物が存在している。

 それが、「ブラッドワーム」だ!

※画像はYouTubeチャンネル「Brave Wilderness」より

 うえーーーー!! なんだこれーーーー! キモいなんてもんじゃない!!!!

 これは2000万人のチャンネル登録者数を誇るYouTubeチャンネル「Brave Wilderness」が公開した映像。

「ブラッドワーム」とは、ゴカイやイソメなどを含む多毛類の仲間で、通常浅い海の底に生息。一部の種類では長さが35センチまで成長することがある。皮膚は、ヘモグロビンを含む赤い体液が透けて見えるため、ピンク色に見える。「ブラッド(血)」の名がつくのも納得だ。

 英語ではおどろおどろしいモンスターのような名前だが、日本の釣り人には「チロリ」や「ギボシイソメ」の名で、釣り餌としておなじみの生き物なんだとか(ちなみにキスやヒラメ釣りにバッチリだそうです)。改めてその姿を拡大した映像を見ると、なんて恐ろしい生き物なんだ…。

■伝説のUMA「モンゴリアン・デスワーム」の正体はこれか?

もう、まんまブラッドワームな「モンゴリアン・デスワーム」の想像図 /

 釣り師にとっては実はなじみ深い生き物とのことだが、UMA好きにとっては非常に興味深い存在。その姿を見てピンときた方も多いだろう。そう、伝説の「モンゴリアン・デスワーム」そのものなのだ!

 UMA研究者の間では、ゴビ砂漠周辺に生息すると言われる「モンゴリアン・デスワーム」。アメリカの探検家で博物学者ロイ・チャップマン・アンドリュースによれば、「長さは60センチで、ソーセージのような形をしており、頭も足もない。非常に有毒で、触れるだけで即死を意味する」という。

口から毒液を噴出し人を襲う。電撃はさすがに「毒で痺れた」という症状を譬えたものかと思うが/Wikipediaより

 また、現地の伝承によれば「口から電撃あるいは毒液を放ち人や馬を襲う」など恐るべき殺傷能力を持っているというが、ブラッドワームの映像をもう一度見てほしい。特徴的な4本の牙、実は大量の銅を含んだ金属の歯で(これだけで常識外れだが)、これで獲物に噛みつき毒を注入するのだという──そう、まんまモンドリアン・デスワームなのだ!

 もちろん、モンゴリアン・デスワームの存在は現在まで確認されていないうえ、ブラッドワームは海底、モンゴリアン・デスワームは砂漠と生息域も正反対。「伝説のUMAの正体見たり!」とは断言できないが、陸封されたブラッドワームが乾燥地帯に適応進化して……などとロマンは膨らむところ。今後のさらなる研究を待ちたいところだ。

■見た目はキモいけど、役に立つ生き物!

金属とタンパク質が結びつき強固な牙を生成するシステムについても研究が進行中だ /ADVANCED SCIENCE NEWSより

 ちなみに、多毛類の多くは雌雄異体で体外受精を行うが、体内受精をする種や、卵胎生、無性生殖をする種もある。多毛類は非常に種類が多く、既知の種だけで約8000種。この他にも未登録の種が大量に存在するとされている。

 多毛類は長らく釣り餌として人間に利用されてきたが、近年になってフランスの研究チームによって、ゴカイの血液中のヘモグロビンは、人間に比べ酸素を運搬する能力が40倍も高いことが判明。ゴカイのヘモグロビンは赤血球の中ではなく、血中に溶け込んでいるため、人間のヘモグロビンとして代用でき、血液型も問わずに使用できるという……!

 2015年にはゴカイの代用血液の臨床実験が始まり、2016年にはフランス西部の病院でヒトの腎移植10例に使用されたという。

 研究者によると、ゴカイから抽出したヘモグロビンは、移植した皮膚の保護や、骨再生の促進に役立ち、万能血液の誕生につながる可能性もあるとか……。

 事故、戦場、災害現場で役立つかもしれない、ゴカイの血液。未来の人類は「ゴカイ人間」になるかもしれない……なんて茶化しちゃダメ!