■世界最悪のネット監視社会・中国

ネットの中でも「皇帝」として権力をふるう習近平国家主席。間違っても「プーさん」などと言おうものなら消されるぞ!

/画像:Kremlin.ru, CC BY 4.0 , via Wikimedia Commons

 国民による強い反発の影響を受け、ゼロコロナ政策から一転して、中華人民共和国はコロナ患者の隔離措置などを撤廃したが、中国は政府の意向によって国民の生活が制限される国。

 

 中国は政府の意向によってインターネットを規制することでも知られている。TwitterやInstagram、YouTubeは使えず、LINE、Facebook、Googleも利用できない。同様のWebサービスは、中国製のSNSや検索エンジンを使うことしかできないのだ。

 

 また中国政府は、インターネット上で国民の言論を統制することで知られており、検索できない言葉が多数存在する。有名なものでいえば、1989年に起きた、民主化デモに対する弾圧事件として知られる「天安門事件」や、事件の起こった日を示す「8964」だけでも現在検索できないNGワードだとされる。

 

 さらに、習近平国家主席とクマのプーさんが似ているとソーシャルメディアで話題になると、「プーさん」がNGワードになり、一切検索エンジンでヒットしないようになってしまった、という笑い話のようなまったく笑えない話もある。しかも、検索エンジンからこうしたNGワードを検索すると、中国政府機関に問題視され、ブラックリストに入れられインターネットの利用を規制・監視される恐れがあるのだ。

 

■五毛党は“はした金”で釣られたネット愚民?

世界最悪のネット監視社会を支えていたのは……(写真はイメージ)

/画像:Shutter Stock

 そんな中国のネット検閲を支えているのが、通称「五毛党」と呼ばれる組織だ。中国のプロパガンダを広めるためにインターネットが一般的に普及しだした初期に形成されたとされ、名前の由来は当初、1コメントにつき5毛(0.5人民元≒約10円/※現状のレートで)が支払われたことに由来する。

 

 一説には、中国中部にある湖南省長沙市の共産党宣伝部が募集したのが始まりとされ、その際に「基本給が600元で、1投稿あたり5毛プラスで支払う」という条件だったとされている。とはいえ、5毛がどんな価値かピンとこない人も多いだろう。

 

 ザックリいうと、2005年当時の湖南省長沙なら、肉まん1個や串焼き1本がだいたい1元。つまり軽食ひとつ買えないような”はした金”なのだ。それゆえ、「五毛(くらいのはした金)で使われる連中」という蔑称に近いニュアンスがこの名称にはあるのだそうだ。

 

 正直、こんなんでよく人が集まるなと思うが、条件をよく見ると「基本給(最低支払額)が600元」とある。さらに調べてみると、当時の湖南省の最低月額賃金は300~400元(注1)。最低賃金の1.5~2倍が保証され、ネットの書き込み次第でさらに……となれば、かなりヤル気が出そうだ。

注1/独立行政法人・労働政策研究・研修機構発表「2003年最低賃金基準と「最低賃金規定」の施行」より

 

■中国のネットユーザー激増と一緒に五毛党も拡大!

 

 なお、これと同時期の2005年、中国政府は大学の掲示板システムに対する組織的な検閲を実行。学校関係者は実習資金を使って学生を非常勤のコメンテーターとして雇い、共産党に批判的な意見に対し、好意的な立場で反論。学校や共産党によって採用された学生コメンテーターの存在が、中国全土で一般的になった。

 

 主な”業務内容”としては、たとえば、中国共産党に批判的な議論を妨害し、政府の利益に役立つ物語を宣伝すること。あるいは、中国の政敵に関する誤った情報やフェイクニュースを拡散することを目的にしている。また、「五毛党」の工作員は、中国国内の大学の共産党宣伝部、共産党青年団の学生、教務、ネットワークセンター職員などから募集されるという。

 

 では、このネット工作員集団は(公的には「網絡評論員/インターネット・コメンテーター」と呼ぶそうだが)、実際問題、どれほどの規模なのだろうか? 一説には発足当初の2005年頃ですでに30万~200万人が活動していたとされ、少し古いデータだが、2015年には1050万人がプロパガンダやフェイクニュースを拡散していたと一部メディアは報じている(注2)

注2/RFA(自由アジア放送)をニュースソースとした中央日報の記事など

 

 なお、この報道が出た当時の中国におけるネットユーザーの規模は6億5000万人ほど。現在は約10億人にまで膨らんでいることを考えると、五毛党の規模も1500万人は下らないところだろう。