■セレブの子弟の伝手で証券業界に

Young Epstein

ベア―・スターンズに在籍していた頃のエプスタイン。

画像:Public Domain via Wikimedia Commons

 この全米トップ3に数えられる進学校、ドルトンスクールでエプスタインの人生の転機が訪れた。教職と並行してある生徒の家庭教師をしていたのだが、その生徒の父が、実はJPモルガンやリーマンブラザースなどと並び五大証券の一つに数えられた投資銀行(証券会社)、ベアー・スターンズ(注3)の会長、エース・グリーンバーグだったのだ。

注3/後にサブプライムローン問題で経営が悪化し、同業のJPモルガン・チェースに買収された。

 

 1976年、エプスタインはグリーンバーグの誘いで、当時、飛ぶ鳥を落とす勢いだったベアー・スターンズに入社。会長直々の教えを受け、たちまち好成績を挙げ「リミテッド・パートナー」と呼ばれる花形の役職に就くことになる。だがその後、突如、エプスタインはベアー社を去ることになる。

 

 前出の『ヴァニティ・フェア』の記事によれば、それは1981年のことで、理由は「自分のビジネスをやりたいから」だったというが、別の報道では、1987年に証券法違反に絡んで解雇されたともされる。そして、この80年代初頭から数年間、エプスタインの人生は闇に包まれている──。

 

■巨万の富を築いたきっかけは「謎の秘密結社」!?

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エプスタインを闇の金融界に誘った謎の人物とは?(画像はイメージ)

画像:Adobe Stock(生成AI)

 エプスタインが退職理由に挙げた「自分のビジネス」とは何だったのか? 当時の彼を知る人物は、

 

「政府や大金持ち御用達のバウンティ・ハンター(賞金稼ぎ)をしている」

 

 と、エプスタインがよく漏らしていたという。具体的には、債権回収からマネーロンダリング、武器取引、情報収集のエージェントとして「裏のカネ」を扱っていたようだ。

 

 実際、この頃には武器取引のためか危ない橋を渡るためなのか、銃器所持許可証も取得していたことも分かっている。また、一部報道ではこの頃、イギリスの武器商人「ダグラス・リース卿」なる人物を通じて武器商人や諜報の世界ともつながりをもったとされる(注4)。そして、2011年に亡くなったとされる、このダグラス・リース卿がその後のエプスタインの人生を決定づけた。

注4/「WHO IS SIR DOUGLAS LEESE?」TruNews2020年31日記事

 

秘密結社

エプスタイン事件の陰に謎の秘密結社が!?(画像はイメージ) 。

画像:Adobe Stock(生成AI)

 武器密輸や諜報、マネーロンダリングの師匠にあたるこの人物、聖フベルトゥス騎士団という17世紀まで遡る秘密結社の一員とされ、その人脈はイギリス王室や欧米各国のセレブリティ、各国の諜報機関から武器商人まで幅広く根を伸ばしているという。その中には、イラン・コントラ事件やロッキード事件で暗躍したサウジの武器商人アドナン・カショギまで含まれ、彼はエプスタインの顧客の一人だったとされる。

 

 なぜ証券業界の同業者も首を傾げるほど億万長者の顧客を集め、巨万の富を築けたのか? 2008年と2016年の二度にわたり十代の少女に対する児童買春や性的虐待(しかも一人は13歳!)の罪で起訴されながら、短い刑期や不起訴など不可解な判決がくだったのか? そして、エプスタインが所有する、別名「罪業の島(Island of Sin)」「ペドフィリア島」「乱交島」などと呼ばれる島で行なわれた犯罪に、なぜ世界中のセレブが手を貸したのか? すべての謎は、ここに繋がってくるのではないだろうか……。