■著名人やスターに都市伝説が多いのはなぜか?

写真はイメージ/ShutterStockより

 都市伝説とは英語の「urban legend」を翻訳した言葉。辞書には「口承される噂話のうち、現代発祥のもので、根拠が曖昧・不明であるもの」「都市化の進んだ現代において口承されている話。出所が明確でなく、多くの人に広まっている噂話」などの説明が書かれている。

 都市伝説の元祖とも呼ばれる「消えたヒッチハイカー」から「〇〇大統領は爬虫類人だった」といった陰謀論めいたもの、最近では映画にもなった「きさらぎ駅」や「犬鳴トンネル」など数々の都市伝説が生まれてきたわけだが、芸能界もまた都市伝説の宝庫。

「あのスターが実は……」と語られる数々の噂。ポイントは(誰もが知ってる)有名芸能人であること。当たり前だが、無名の芸能人の真実など誰も興味がない。その点では都市伝説=スターの証拠というところだが、なかでも日本で数々の都市伝説に彩られたスターと言えば、“ゴッド姉ちゃん”と謳われる和田アキ子だ。

■芸能界で語り継がれてきた「和田アキ子伝説」

“和製R&Bの女王”(注1)“芸能界のご意見番”など多くの異名をもつ和田だが、そのデビュー当時のエピソードも伝説的なものが多い。曰く「大阪・ミナミで不良グループを従える伝説の女番長だった」「喧嘩相手を道頓堀川に投げ捨てた」と目を疑うような話だが、これらの一部はバラエティー番組でご当人が認めた事実、つまり「本当にあった都市伝説」なのだ。

注1:R&Bの名曲を歌い上げ、伝説的な歌唱力を発揮した名盤『DYNAMITE SOUL』を聞けば、この名が真実だとお分かりいただけるだろう。ぜひ!/編集部の個人的お願いですがw

 さて、不良エピソードとともに「和田アキ子伝説」といえば定番なのが和田アキ子=巨人伝説。たしかに、公式プロフィールでは身長174センチで、同世代の女性の平均身長150.8センチに比べるとはるかに高身長。ましてやデビュー当時の芸能界では目立つ存在だっただろう(注2)。また、不良伝説や迫力ある声量やキャラもあり、現実以上に大きく見えていたのもあったかもしれない。かくして、共演経験のあるタレントに和田アキ子の“デカさ”がエピソードトークのネタにされ続けてきた今に至るわけだ。代表的な「和田アキ子巨人伝説」はこんな感じ。

注2:和田アキ子は自著のなかで背が高いというだけで態度がデカいと勘違いされ、先輩歌手から理不尽ないじめに遭ったことを記している。

 

・和田アキ子のスリッパを便器と間違えたタレントがいる。

・都内にオーダーメイドの靴店があるが、和田アキ子の靴型はボートみたなサイズだった

・交通事故に遭ったが、逆に車が壊れた(事件当時、東スポが「車が大破!」と見出しw)

・タクシーを素手で止める(→手を挙げて止めるのではなく手で押して止める。ほぼ範馬勇次郎w)

・CDケースの開け方がわからず、手で割って出していた

・握力が強すぎておにぎりが餅になる(→実際は今日の料理で講師を務めるぐらい料理上手です。念のため)

・ビートたけしのポルシェに乗って、降りるときにシートベルトを外し忘れて車体を背負った

・素手で鯨を捕獲した

・山にハイキングに出かけ、でくわしたクマが死んだふりをした

■もはや民話に登場する「だいだらぼっち」とごっちゃに!?

 現代よりコンプラ意識が低かった時代、「和田アキ子巨人伝説」は誰かの冗談が大袈裟に広まった例だろうが、もはや後半は民話や伝承に登場する巨人・だいだらぼっちのレベル。以前の記事で紹介した「アメリカの巨人ポール・バニヤン」の都市伝説が焚火を囲むきこりたちのホラ話で膨らんでいったように、和田アキ子巨人伝説も最初はテレビ局の楽屋で、お次はテレビやラジオの番組中に、後にはネットの掲示板などで「いや、俺はもっと面白い話を知ってるぜ」と膨らんでいったのだろう(ご当人にとっては迷惑な話だが)。

 そもそも、だいだらぼっちのように「巨人伝説」は昔から現在まで、世界中の人間の興味を惹きつける。ネットなど存在しない時代でも、「昔、〇〇に大きな人間がいて、こんなことがあった」というほら話が誇張されて世間に広まっていった、というのは想像に難くない。

 そして、以前は「口伝え」が基本だったものが、ネットの登場によって爆発的なスピードで世界中に拡散するようになる。その典型例が「チャック・ノリス・ファクト」だ。