■悪霊か?エイリアンか?BECの“正体”とは?

白目のない黒々とした目といえば、グレイ型エイリアンの特徴と一致するが…… /ShutterStock

「黒い目の子供たち」、BECの正体とは何なのだろうか? これだけ広まった都市伝説だけに、その伝説の源流についてはさまざまな分析が行なわれている。例えば、前出のデイリー・スター紙やリー氏は「悪霊説」を強く推している。

 一方、いわゆる「放置子(ネグレクトされた子供)」が深夜に徘徊していたのでは? などという現実的な解釈もある。また、白目の部分を真っ黒にできるコスプレ用のカラーコンタクトを使っているとか、白目の部分にインクを入れる「眼球タトゥー」などを指摘する声もあるが、10代の子供が眼球にタトゥーを入れるのは、難しいだろう。
 さらに多いのが、「スターチャイルド」や「ヒューメイリアン」などと呼ばれるエイリアンとのハイブリッドがBECの正体だという説だ。

 確かに、黒目しかない目といえば、エイリアンの代表格「グレイ」の特徴と相通ずるものがある。また、前出の米・バーモント州や英・バーミングハムの事例のように、BECを連れ去る男たちや謎のクルマは、いわゆる「MIB(メン・イン・ブラック)」を彷彿とさせる要素だ。

■BECのイメージの源泉は傑作SFホラーだった?

『光る眼』をもとにしたBECのファンアート

 そして「エイリアンとの混血である不気味な子供たち」という点で、奇妙な符号を見せる傑作SFホラー映画がある。『遊星よりの物体X』や『ゼイリブ』などで知られるジョン・カーペンターの傑作SFホラー『光る眼』だ(ただし、こちらは黒い目ではなくタイトルどおり光っているが……)。

 公開年が1995年で、アメリカにおける最初のBECの報告例とされる、テキサス州の事件のちょうど1年前というのも奇妙なつながりを感じさせる。あるいは、黒い目の子供のイメージの源泉は、この映画にあったのかもしれない。

 さらに、実はこの映画、1960年公開のイギリス映画『未知空間の恐怖/光る眼』のリメイクで、舞台はイギリス南部の村、しかも、原作者ジョン・ウィンダムの出身地はイギリスにおけるBECの”本拠地”スタッフォードシャーのすぐ隣りなのだ。

 ここまでくると、2つの映像作品が「黒い目の子供たち」という都市伝説に与えた影響は少なくないように思えるのだが、皆さんはどう思うだろうか?

 

■‟ジャパニーズホラー”の金字塔『呪怨』との関連性も?

 黒い目の子供たち(BEC)のイメージの源泉としての映像作品ということでは、こんな奇妙な話もある。

 BECの都市伝説が盛り上がった2000年代前半、ある作品が公開されている。日本国内のみならず海外でも大ヒットした日本のホラー作品『呪怨』シリーズだ。『THE JUON/呪怨』、『呪怨 パンデミック』は2004年、2006年にハリウッド版リメイクが公開され、「ジャパニーズ・ホラー」ブームを巻き起こした。

 そして、このシリーズを通じて活躍(?)するのが「俊雄くん」こと佐伯俊雄。この世に強い怨念を残して死んだ主人公・佐伯伽椰子の息子で、青白い肌の少年で、目の周りが黒く縁取られ、画像のようにカットによっては「黒い目」になっている。そう、BECと驚くほど似ているのだ。この「俊雄くん」の不気味なイメージが、BECに関する語り部たちに影響を与えた可能性はあるだろう。

■BECは「見知らぬ人間が訪れる恐怖」が具現化したもの?

突如、現れる不気味な子供……その正体とは?

 一方、「不気味な子供が突然訪ねてくる」という設定については、こんな分析もある。

 アメリカやイギリスなどの英語圏では、ハロウィーンの日に「Trick or Treat」と言いながら家々を訪ねてお菓子を集めて回る習慣があるのは皆さんもご存じだろう。

 そして、1992年10月17日、米ルイジアナ州バトンルージュの高校に留学中だった日本人の高校生(16)がハロウィーンの仮装パーティーに行く途中、訪問先を間違え、別の住宅の玄関をノックして強盗と思われ住民に射殺されてしまう、という痛ましい事件が起きたことを覚えている方も少なくないだろう。

 知らない人間が現われたら問答無用で射殺するというアメリカの「常識」にショックを覚えた方もいると思うが、こうした知らない人間が急に自宅に訪ねてくる恐怖、自宅の近隣に移住してくる異人種への潜在的な恐怖というものは、かの地では根深いものがあるそうだ。そして、これらの不安や恐怖などが絡み合って具現化されたものが、BECの正体なのかもしれない……。