■電話が来ることを知っていたユタ
友人が電話をすると、祖母はすぐに電話に出た。そして、まるで電話があることを知っていたかのように『待っていたよ』と友人に言ったという。
「そこからは、友人のお婆ちゃんの言う通りにされました。まずは、友人が塩を持ってきました。そこに民泊にあったヒヌカンと呼ばれる香炉の灰を少し混ぜて私にまぶしてきたんです」
それでもリサの熱は下がらなかった。友人は「どうすればいいのか」と祖母に尋ねると「やっぱり、効かないでしょう。今すぐ石にあやまりに行きなさい」と言ったという。
友人はさっぱりワケがわからず、「石って何のこと?」とリサに尋ねた。リサは「もしかしたらあの座った石のことを言っているのかな……」と遠のく意識の中でぼんやり考えていた。
■「あの石に座ったのか!?」と動揺する地元の友人
翌朝になってもリサの体調は回復しなかった。念のため病院にも連れて行ってもらったが、原因不明と言われてしまった。そこでリサは初めて、友人にビーチで石に座ったことを明かしたという。
「友人は『石に座ったの⁉』とひどく驚いた様子でした。でも、私には何がいけないのかさっぱりわかりません。友人は突然、立ち上がり『石にあやまりに行くよ!』と言い出したんです。車に乗ると、友人はおばあちゃんにふたたび電話をかけて、酒とお塩をスーパーで買いました。そのとき、私の髪の毛の束が必要だと言われたんです」
キャバ嬢は髪が命ともいわれる。そんなことは死んでも嫌だ!とリサは思ったが、
「このまま体調が治らなくていいの?」
と言う友人の気迫に押されて渋々、3センチほど髪の毛を切ったとそうだ。その後、石の前につき、持ってきた酒を器に入れて塩と髪の毛と一緒にお供えした。そして友人に言われた通り、石に向かって15分ほどあやまったという──。
■リサが座った石の正体とは…
「すると、自分でもびっくりするくらい体調が回復していったんです。体の赤みも消えてさっきまでの不調が嘘のように戻っていきましたね。でも、石に座るのがなぜダメだったんだろう?と友人に尋ねると、友人は『この石は御嶽(うたき)なんだって』と声を潜めて教えてくれたんです」
以前の記事でも少し書いたが、御嶽とは沖縄南西諸島における祭祀を執り行なう「聖地」の総称のこと。私が訪れた南城市の斎場御嶽(せいふぁうたき)や久高島のフボー御嶽などの琉球開闢七御嶽が有名だが、これらの他にも多くの御嶽が多く存在するという。
リサはたまたま、友人とともに行動していたから事なきを得た。だが、もし海に行った後、一人で行動をしていたら一体どうなっていたのだろうか──。