■政府お墨付きの「踏み入れたら死ぬ!」無人島

 この世界には人間が決して入れない、危険すぎる無人島が世界にはいくつも存在する。

南米大陸のブラジル、サンパウロから33kmの沖にケイマーダ・グランデ島という美しい無人島がある、この島は毒蛇だらけで、人間の立ち入りが禁じられている危険な無人島として、世界中に知られている。


 ケイマーダ・グランデ島は総面積約 0.43平方キロメートルで、東京ドーム約9個分という小さな島。島の大半は 0.25 平方キロメートルは熱帯雨林で覆われ、そこには固有種のゴールデン・ランスヘッドという毒蛇が1平方メートルあたり1匹から5匹、という密度でひしめいている。

 以前は人間も住んでいたが、いまや毒蛇に占領された島ということで「スネーク・アイランド」の異名を持つこの島。ちなみに「稀少な毒蛇と“人間を”保護する」ため、ブラジル政府によって立ち入り禁止とされているのだという。つまり政府お墨付きの「踏み入れた死ぬ島」というわけだ。

 かつては島全体で約40万匹を超える毒蛇がひしめいていたとされていたが、現在、その総数は2000〜4000匹だと推測されている。島にはほ乳類がおらず、主に海鳥をエサとしているとされ、後述するような猛毒は、瞬間的に海鳥を仕留めるため、適応したものとされている。

■「スネーク・アイランド」誕生の謎と伝説

 ではなぜ、こんな毒蛇がひしめき、人が踏み入れられない島が生まれたのか? それは数千年にわたる歴史に関わってくる。ケイマーダ・グランデ島はかつてブラジル本土と地続きだったが、数千年前に氷河期が終わった後、海面上昇で本土から切り離され、蛇は島に閉じ込められてしまった。その後、蛇は環境に適応し、個体数が急速に増加したと考えられている。

 また、現地の言葉で「ケイマーダ」とは「森を焼く」「森林火災」という意味で、以前は大規模なバナナ農園を拓くため、熱帯雨林の大半を焼き尽くしたことから、島の名が「ケイマーダ」となったそうだ。このエピソードからもわかるように、以前は島に住民が暮らしていたが、1909年にはすべての住民が退去。島の主は毒蛇となったわけだ。

 なお、ケイマーダ・グランデ島については「海賊が島に埋めた財宝を守るため、大量の毒蛇を島に放った」という埋蔵金伝説も囁かれているが、残念ながら、それを示すような証拠は見つかっていない。

マムシの約70倍!肉を溶かす猛毒を持つ蛇

 この島の主である、ゴールデン・ランスヘッドはケイマーダ・グランデ島に固有のマムシの一種。体色は淡黄褐色でサイズは70センチから90センチ。最大では118センチに達する。島にはこの種しかおらず近親交配が続いて生息数減少が危惧されており、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストでは「近絶滅(絶滅寸前)」とされている。

 先述したように、島の環境に適応したゴールデン・ランスヘッドの毒は非常に強力で、ラテンアメリカで最も有毒な蛇だ。半数致死量(LD50)を元に単純計算でいえば、日本固有のマムシの約70倍の猛毒(注1)。島が立ち入り禁止なため、人間が嚙まれて死亡した例は実は少ないが、マムシと同じ出血毒なため、嚙まれた場合、肉が溶け(筋肉の壊死)、出血が止まらなくなり(血液凝固の阻害)、最悪の場合、多臓器不全で死に至るという。

注1/LD50でマムシは16 mg/kgなのに対し、ゴールデン・ランスヘッドは0.24~0.26mg/kg(推計)


 毒蛇が占拠し、人間が立ち入れない無人島……まるでおとぎ話のようなケイマーダ・グランデ島は現在、ブラジル政府によって徹底管理され、ブラジル海軍と研究者しか立ち入ることができない。島にまつわる伝説そのまま、海賊が盗んだ財宝を隠すのにはうってつけの無人島だが、現在もほとんど人類が足を踏み入れていない危険な場所なのだ。もしかして未知の生物や鉱物などの資源が見つかるかもしれない?