■親の親のそのまた親は誰か

地球上の生命ははたしてどこから誕生したのか? /画像:写真AC

 一番最初の生命はどこで生まれたのか。


 生命がどのようにして生まれたのか、そんなことは自分とは関係ないと思うかもしれない。しかし意外と自分の出自は気になるものだ。


 ご先祖が武士だとか貴族だとか、今の自分とは関係もないのに自慢する。平等だ、努力だ、金持ちは許さないと言いながら、こと自分だけは特別でありたいのが人間である。占い師に、あなたの前世はエジプトの神官でした、と言われると、エジプトの神様が犬の頭をしている以外に何も知らないのに、なぜか偉くなった気になる。


 我々がどこから来てどこへ行くのか? これはあらゆる宗教がテーマにしてきたことで、重大なテーマなのだ。


 有史以来、地球上の生き物は神様が作ったと考えられていた。神話では神様が泥をこねて人間を作ったり、神様の死体から動物や穀物が飛び出して、地球に生命が溢れたことになっている。

 

■ネズミは汚れたシャツ+牛乳から自然発生?

古代ギリシアのアリストテレスから18世紀まで「生命/生物は自然発生する」という説がクソ真面目に研究されてきた /画像:写真AC


 18世紀ごろ、日本でいえば江戸時代の半ばまで、ヨーロッパでは虫やネズミなどの下等生物は泥や草の露から生まれるという「自然発生説」が信じられていた。汚れたシャツに油と牛乳を垂らして、小麦の粒と一緒に瓶に入れておいたらネズミが生まれたと大真面目に発表した科学者もいた。


 現代の常識では、シャツと牛乳からネズミは生まれないし、泥からウナギは生まれないが、18世紀まではそれが常識だった。


 やがて細菌が発見され、進化論が広まり、生き物が無生物から自然と生まれるのは間違いだとわかった。どれほど小さな生き物であっても親がいて子が生まれる、それが自然の原則だ。


 しかし親の親のまた親とどんどん先祖を遡ったら、生命はどうやって始まったのか? 最初が卵なら産んだ親がいる、産んだ親がいるならその親もいる。


 一番最初の親はどこの誰だ?

 

■生命はどこで生まれたのか

原始の地球の大気に雷が反応し、生命の素ができたと長らく信じられてきたのだが、間違いだったらしい

/画像:Shutter Stock

 1922年、旧ソビエト連邦の生化学者オパーリンは『生命の起源』という本を発表した。オパーリンは原始の大気に含まれる単純な化学物質が化学反応を起こして有機物が作られたと考えた。


 生命が生まれるには、生命を作る材料が必要だ。人間の体は7割が水分というのは良く聞くと思う。残り3割はタンパク質がほとんどで残りは脂肪だ。骨があるからカルシウムは多そうに思うが、骨は体重の1~2パーセントの重さしかないそうだ。


 極端に言えば、私たちの体は水とタンパク質でできていて、タンパク質がなければ生命は生まれようがない。筋肉はもちろん、皮膚も内臓も、細胞の中で働く酵素もすべてタンパク質だ。


 タンパク質はアミノ酸が組み合わさってできている。


 生命が生まれる前、およそ35億年前の地球には、水はあったがアミノ酸はなかった。アミノ酸がなければタンパク質がなく、タンパク質がなければ細胞ができない。細胞がなければ、現在のような多様な生物が生まれることもない。


 オパーリンは原始の地球でアミノ酸が生まれたと考えた。それが原始の海の中で化学反応を繰り返しながら、複雑な有機物へと進化し、やがて生命が生まれたのだ。ただ、当時のオパーリンはあくまで仮説を立てただけで、原子の地球で本当に化学物質が化合してアミノ酸が生まれたのかを確認したわけではなかった。