■なぜ恐竜はあの巨体で地球上で生きていけたのか?

地上で歩き回るには恐竜はデカすぎる! なぜ巨大な恐竜は重い体で動き回れたのか?

/画像:Wikimedia Commons

 第1回で「恐竜は爬虫類のような変温動物じゃない。恒温動物で鳥のご先祖」と紹介したが、恐竜が恒温動物なら、体温の維持のために巨大化する必要はなくなる。では、なぜ恐竜は巨大になったのか?

 

 そもそも恐竜はでかすぎる。世界最大の恐竜「アルゼンチンザウルス」は、頭の先から尻尾まで約60メートル、体重約150トンと言われている(化石の一部しかないため、諸説あり)。

 

アパトサウルスの骨格標本(カーネギー博物館)/画像:Wikimedia Commons

 アルゼンチンザウルスのように、首と尻尾が長く、象のように太い脚の竜脚類(注1)には体長が20~30メートルものがざらにいる。鯨が地上を歩くようなものだ。本当に彼らは地上を歩くことができたのか?
注1/第1回で紹介したアパトサウルスや映画『ジュラシック・パーク』に登場したブラキオサウルスなどが有名

 

 しかもあの長い首だ。キリンは頭に血を送るために血圧が異常なほど高く、平均的な人間の血圧の倍以上、上が300mmHg、下が160mmHgもある。であれば、恐竜はどうなるのか。首を立てると頭頂まで8~10メートルである。高血圧どころではない。

■地球の重力が小さく、恐竜は巨大に?

でかい図体の恐竜が素早く動けたのは、重力が小さかったから?

/画像:Wikimedia Commons

 恐竜が巨大化したのは、古代の地球の重力が現在よりも弱かったため、という説がある。もし地球の重力が小さければ、体は軽い。巨大生物でも自由に動ける。重力の負担がないため、成長は促進され、体は巨大化するだろう。

 恐竜が大きいから地球の重力が小さかったなんて、本末転倒な気がするが、これを「重力変動説」という。さらに重力が小さくなる原因を「地球の自転が速かった」と「地球が今より小さかった」とする2説に別れる。

 まず地球の自転が現在よりも速かった説。

 現在の地球は1日24時間で自転しているが、コロンビア大学のポール・オルセンらによると、14億年前には地球の1日は18時間(注2)だったそうだ。つまり昔の地球は今よりも速く回転していたのだ。
(注2)/「Proterozoic Milankovitch cycles and the history of the solar system」(PNAS 115 ( 25 ) 6363 - 6368 2018 6 04)

■数パーセント重力が少なくても巨大化はしない?

 地球上における「重力」とは、地球の質量と物体が引き合う万有引力から、自転で発生する遠心力を引いたものだ。回転していれば、外へ飛ばそうとする力=遠心力がかかるので、物体にかかる力は重力から遠心力を引いた力になる。

 

 そのため、物体の重さは遠心力が一番大きくなる赤道上のほうが南極や北極よりも約0.5パーセントほど軽くなっている。体重を軽くしたい人が赤道に行けば、ちょっとだけ体重計のメモリは小さくなり、ダイエット気分が味わえるわけだ。


 遠心力によって地球の重力は弱められ、恐竜は巨大化した──、一瞬、なるほどと思うが、恐竜のサイズを変えるほど遠心力の影響は大きくはない。今の2倍の速さ、1日12時間で地球が自転したとしても、遠心力によって重力が減少するのは5%ほど。つまり、恐竜が巨大化するほど遠心力で重力が弱まることはないのだ。