■恐竜は「鬼滅の刃」の無惨様並みの化け物!?

 昔の想像図がいかに間違っているかは、研究データからも明らかだ。例えば古生物学者の試算では、同じ竜脚類で体長26メートルのパロサウルスは、頭を持ち上げた状態で脳まで血液を送るのに重さ1.6トンもの心臓が必要なのだそうだ。現生動物で最大のシロナガスクジラの心臓が180キロなので、その10倍。デカすぎる。ちょっとした乗用車サイズだ。

 

 いくら何でもデカすぎなので、小さな心臓が8個あったという説もあるという。心臓が8個? 恐竜が骨しか残っていないからって、勝手なこと言ってないか? そんな生き物がいると本当に思っているのかと古生物学者を問い詰めたい。パロサウルスは鬼舞辻無惨か? 鬼舞辻無惨は「鬼滅の刃」のボスキャラで、心臓がやたらに多いのだ。脳みそも2個あって、気色悪いやつなのだ。

 

 昔の想像図どおりだと、恐竜は心臓だらけの「無惨様」のような化け物になってしまうが、最新の研究によるとアパトサウルスたち竜脚類は、首を水平に保ったまま左右に振るだけで、頭を持ち上げることはあまりなかったそうだ。ということは、第2回でキリンの例を引いたように血を高い頭へと送る必要はなくなる。

 

 つまり、首が水平なら、頭に血を送るのにバカでかい心臓も必要ないし、鬼舞辻無惨も必要ないということだ。どう考えても最新研究に基づいた想像のほうが現実的だろう。

 

■鳥と同じく骨がスカスカだから巨大化できた?

完全に鳥の姿をした恐竜もいたという

/画像:Wikimedia Commons

 羽毛恐竜は鳥の祖先だ。鳥の骨の構造が恐竜の巨大化を可能にした。

 

 鳥の骨は中空になっていて、非常に軽い。だから鳥は飛べるようになったが、恐竜も鳥と同じ骨を備えていた。恐竜はその軽い骨を飛ぶためではなく、体を大きくするために使った。つまり、恐竜の体は大きいが意外に軽いため、地球の重力下でも走り回ることができる、というわけだ。

 

 さらに、大きな体を効率よく動かすには、大量の酸素が必要となる。これも鳥類に特有の気嚢(きのう)という器官が解決する。

 

 人間なら気絶するような空気の薄い高度でも、鳥が平気で飛び回れるのは、この気嚢の働きだ。肺は吸う息と吐く息が同じ経路を通るので混じってしまい、酸素の取り込みの効率が悪い。鳥の気嚢は空気を吸う器官と吐く器官がわかれているために、酸素を無駄なく吸収できる。

 

 恐竜は鳥だからこそ軽い骨と気嚢を備え、巨大化できたのだ。