■出会いを求め「婚活パワスポ」巡りをする女
パワースポットを巡るのが好きな女性は多い。キャバ嬢もまたしかりで、特に商売繁盛や金運アップのご利益がある神社仏閣が人気のようだ。
だが、こちらがどんなに願ってもご利益が得られないこともある。 ましてや、参拝の仕方がデタラメだったとしたら……。
「私、もうパワースポットには行かないほうがいいのかな……」
そう語るのは筆者の知人である都内のキャバクラに勤務するリナ(仮名)。今回はリナが実際に起こした耳を疑いような話をご紹介しよう。
リナと知り合ったのは彼女がまだ20代前半の頃。出会った当時はそこそこ美人で店でも人気のキャバ嬢であった。そんなリナに異変が訪れたのは彼女が30歳の誕生日を迎えた頃。結婚を考えていた恋人に振られたのであった。
「新しい彼氏がほしいから、縁結びにめちゃくちゃ効く神社とお寺に行ってくる!」
■あの聖地でとんでもない行動に出るリナ
こうしてリナの神社仏閣巡りが始まった。関東一円はもちろん、時には関西まで足を伸ばして有名な”縁結び系の神様”に神頼みをして回ったのだ。
しかし、帰ってくると必ず、浮かない顔をしている。
「〇〇神社に行ったんだけど、途中で気分が悪くなっちゃって……」
「〇〇寺で観音様を見てたら、なんか怖くなって帰ってきた」
話を聞いている私からすると「?」という感じだが、リナは至って真剣だ。心配になった私は、リナを連れて日本でもっとも有名ですべての願いを叶えてくれるという神宮に行った。
だが、そこで私はとんでもないことを目にする羽目になる。その神宮の境内の中でもっとも強力なパワースポットとされる「ある石」で、リナは信じがたい行動に出たのだ。
「なんか、これ熱いんだけど……!」
その石は、まわりがしめ縄で囲まれており、手をかざすと石の放つパワーで掌が温かくなるといわれている。だがその一方で、神の宿る神聖なものなので手をかざすことは不敬な行為ともされている。
しかも、リナはその石に手をかざすどころか、思いっきり触っていたのだ。慌ててリナの手を払う私。そのとき、リナの手が小刻みに震えていることに気づいた。
■こ、こいつ……神様に嫌われてる!?
……この女、もしかして酔っ払ってる? いぶかしそうな表情の私に、
「バレた? 実はここに来る前に、一杯引っ掛けてきて~」
なんの悪気もなくヘラヘラ笑うリナ。えっと……あれだけ神社仏閣巡りしていれば、神社は神聖な場所だから酔っぱらった状態でお参りするのは失礼に当たることぐらい知ってるよね? そんな私の問いかけにも、
「そんなことより、参道に食べ歩きできるとこあったよね? 後でまた飲もう~!」
と、耳に入ってない様子。それどころか、なんの悪びれもなくバッグの中から缶チューハイを出そうとする(まだ持ってたのか!)。さすがのわたしも慌てて止めたのは言うまでもない。その後、さらに境内を進んでいくと……。
「気持ち悪い、吐きそう」
そう言って、うずくまったのだ。私は思った……こいつ、神様に嫌われているのでは?
これまでリナが言っていた「気持ち悪くなった」「怖くなった」などの言動が、すべて答え合わせができた瞬間だった。その後、私は滾々とリナに説教をした。リナは「もう! わかったってば~」と言いつつも、境内から外へ出た瞬間に再びバッグから缶チューハイを取り出して飲みだした。ダメだコイツ……。
■神様にも仏様にも敬意ゼロじゃあ……
リナが神様に嫌われている理由はよくわかったが、そういえば、寺でも同じような症状が起こると言っていたので、思い当たる節がないか聞いてみた。リナは少し考え込んだあと、あっけらかんとした口調でこう言った。
「実は最近、キャバでお坊さんの客がいたんだけれど、付き合ってくれほしいと言われたんだよね。でも、断っちゃった。髪型が無理だったから! キャハハ!!」
確かにキャバクラにお坊さんの客が来ることもある。私も何度か接客したことはあるが、失礼な態度をとってしまったこともあるかもしれない。だが、出家の象徴である坊主頭を理由に振るのはあまりにも失礼が過ぎる。……この女、仏様からも恨み買ってそう。
リナは神様にも仏様にもまったく敬意がなく、ただのパワースポットと見做している。だから、気持ち悪くもなるし、ご利益も受けられないのかもしれない。
実はこの一件以来、私自身も神社仏閣に参拝に行くことはあまりなくなった。
常に酔っ払っているような女は神社仏閣のご利益を受けられないのかもしれないのかなと感じたからだ。さすがにリナのように酒を片手に参拝するようなバカはしないけれど、リナのお陰で神様や仏様の間でキャバ嬢のイメージが悪くなってしまったのかもしれないのだから……。