■人づきあいが苦手ならヨーグルトを食え!?

ヨーグルト

カラダにいいのは知ってましたが、性格までよくなる?

画像:写真AC

 また、こんな実験結果も報告されている。

 

 腸炎を起こす細菌、カンピロバクターに感染させたマウスは不安行動を見せ、抗菌剤を飲ませたマウスでは、脳の神経を修復したり新しく作ったりする、認知に関係するタンパク質が増加することもわかった。こうした実験結果が指し示すように、腸内細菌によって体調や性格は変わるのだ。

 

 さらに、ストレスや慢性疲労で悩む人に、アシドフィルス菌、ビフィダム菌、ロンガム菌という3種類の菌を飲んでもらった実験もある。いずれも整腸作用があり、後ろ2種はビフィズス菌の仲間だ。これらを摂取した人は、半年後、なかなか抜けなかった疲労が40.7%も改善! 別の実験で、乳酸菌の一種、Lカゼイ菌を慢性疲労症候群の人に2カ月間飲んでもらったところ、うつ病の判定基準である「ベックうつスコア」が大幅に改善した。

 

 またアンケート調査でも、ヨーグルトなど発酵食品をよく食べる人は社交不安や神経症が少ないことがわかった。遺伝的に神経症のリスクが高い人が発酵食品を食べるようにすると、社交不安症状が減少した(※1)

 

「人づきあいが苦手な人は、悩む前にまずヨーグルトを喰え」

 

 ということが科学的に明らかになってきたようだ。

 

 

■腸内細菌は母から子へと受け継がれる

赤ちゃんとお母さん
腸内細菌はお母さんから赤ちゃんへ移動していく。 画像:Shutterstock

 こうして人の性格や社会性の有無などを左右する腸内細菌、実は、母親から子供へ体液を通じて渡される。具体的には、出産時の膣粘液や排便などごく微量のやり取りで伝えられる。また、帝王切開の場合でも、数カ月で母子の腸内細菌叢はほぼ同じになるのだそうだ。

 

 実際、マウスでの実験で、妊娠中の母マウスの腸内細菌を抗生剤で減らし、生まれた子ネズミの脳に影響があるかどうかを調べたら、あまり活動せず、壁の隅で動こうとしない、社会性のないネズミになったという。無菌ネズミと同じことが起きたのだ。お母さんがキレイ好きなのは良いことだが、度が過ぎてシュシュと除菌スプレーで殺菌しまくりだと、母子の菌の受け渡しがうまくいかないんじゃないかと心配になる。

 

■「炎症は万病の元」とのことだが……

体の炎症

カラダの不調はもちろん、こころの不調も炎症が原因だった!?

画像:写真AC

 ……さて、ここでこんな疑問を感じた方はいないだろうか?

 

「腸内細菌が性格や精神の健康を左右するのはわかった。でも、“なんで”そうなるの?」

 

 その疑問を解くヒントとなるのが「炎症」だ。「あの赤くなったり、痒くなったり、痛くなったりの炎症?」と思うだろうが、サイコバイオティクスのキーとなるのは炎症らしい。腸内細菌がうまく働いていると体の炎症が抑えられ、広くパフォーマンスが上がり、病気にもなりにくい。逆に腸内細菌がうまく働かないと、炎症が起きて病気になりやすい。

 

 つまり、炎症はさまざまな病気を引き起こす原因なのだ──いや、「炎症なのだ!」と言われても仕組みがわからんのだよ。という声も多そうなので、次回は、炎症とうつ病について、新しい知見を紹介しよう。