■「クマがかわいそうだから殺すな」は差別意識の表れ!?
「あんなに賢いイルカを殺すなんて残虐だ!」
「クマがかわいそうだから殺すな!」
「人間とは友だちの犬を食べるとは何事だ!」
といった動物愛護の言い分には、根元に強烈な差別があるというのは、誰だってわかる。
そもそも「動物愛護」を声高に叫んできた欧米人は「聖書に書いてあることは神の言葉、書いてないことは何やってもオッケー」みたいな論理で生きている。たとえば、旧約聖書に
「すべて水の中にいて、ひれも、うろこもないものは、あなたがたに忌むべきものである」
(レビ記11章10節)
と書いてあるので、うろこのないタコは悪魔の魚、うろこのないイルカやクジラは食べてはダメ。両方食べる日本人は、悪魔の民族。
だから欧米人はクジラを殺して油をとるのは平気だが、食べるのはダメだ。彼らが日本人を許せないのは、クジラを「殺すこと」ではなくクジラを「食べること」なのだ。ここ、テストに出るから、ぐらいに重要な点だ。
そこに環境やら人権やらが結びつき、グローバルに進めるのに聖書で押し通すのも無理があるというので、出てきたのが知能。頭がいい動物を殺すのは人種差別にむすびつく危険な行為だという。過去に散々、黒人はしゃべる動物であり、人間じゃないとして奴隷にした欧米人らしい言い分である。
自分たちの悪行三昧をなかったことにするのに、イルカがかわいいだのイルカセラピーだの、なめとるんかと思うが、そういう背景を知らない善良な人々は、いつも小さな良いことをして自分は良い人側に立ちたい。それで正義の名の下に市役所に電話して「クマがかわいそうだろ! 素手で戦え!」などと怒鳴る。
クマを守れなんて欧米の環境保護の連中が一言も言わない時点で、動物愛護のポリシーからハミ出ていることに気づけよと思う。かわいいから動物守れ? 欧米人は1ミリ秒も思わない(のはずだが、いろいろな人がいるので断言はできないです……)。
■頭がいい動物とはどんな動物か?
「頭がいい動物」というのは定義が難しい。思い浮かぶのはイルカ? チンパンジー? 常識ではそうなる。人間に次いで頭のいい動物はチンパンジーやゴリラのような類人猿かクジラやイルカ。それがこれまでの常識だ。昔教わった理科の教科書でもそうだった。
しかし、だ。そもそも動物の頭がいいか悪いかをどのように判断するのだろうか? 人間にも頭のいい悪いがあるように動物にも個体差があるので、そのあたりの判断は非常に難しい。昔、動物園で見た大型のサルの夫婦は、喧嘩して怯えたメスがオシッコを漏らしながら逃げ、いらついたオスがウンコをそこら中に投げていたので、サルが頭がいいとはまるで思えないのだけども。
知能レベルの判断は以下の8項目(学者や研究対象で増えたり減ったりする)が基本となる。
・言語……人間の言語を一部でも理解し、また自分たちで独自の言語を持つ
・図形の認知……四角や丸といった幾何学図形を理解する
・遊び……生存に関係のない行動を行う
・道具……道具を使ったり、利用する
・短期記憶と長期記憶……数秒から数分の記憶と数時間から数日~数年の記憶を持つ
・社会性……他の同種とコミュニケーションをする
・自制心……目的のために食欲などを我慢できる
こうやって並べてみると、自制心なく食べて太っている自分が知性のない生き物のような気がしてしょうがないが、それはまあ……おいておこう。
さて、この基準から意外な生き物の頭がいいことがわかってきた。まず筆頭は、意外や意外、豚さんだ。
■豚は3歳児ぐらいの知能をもっていた!
そもそもの大前提として、目が悪い動物に目を使う検査を行ない、頭が悪いと言われても動物だって困る。匂いで判別する能力で知能が決まるなら、人間は最下位に近いだろう。動物の能力特性をよく見て検査を行なわないといけない。
豚の場合、嗅覚と聴覚が極めて敏感だ。彼らは匂いで相手が発情期かどうか、さらには怒っているかどうかまで判断し、聞こえる音の範囲は42Hz ~ 40500 Hz であり (※1 Heffner & Heffner 1992)、超音波まで聞いている。そうした動物の基本的な違いを理解した上で行なわれている研究を紹介していこいう。
まず豚の知能のうち、記憶力。餌が入ってると覚えた箱を5日後に見せても覚えていたことで、ある程度の長期記憶はあり、身振りをするとフリスビーなどのおもちゃを取ってくることも覚え、3つ以上の中から選んで持ってくることもできたので、言語も理解できている。
さらにフリスビーを持ってきたら置いて座るといった、動作と物の関係を覚えることは、イルカ並みの知能がいるとされているが、それもクリアした。鏡像も理解し、鏡に映った自分の姿と背景を見て、自分の背後に置かれたエサ箱を見つけ出した。
チンパンジーは4歳児程度の知能とされているが、豚はチンパンジーががクリアした迷路と同レベルの迷路を学習した。総合的に「ブタの認知能力(感情の深さ、記憶力、空間学習、自己認識、物体の識別など)は3歳の幼児と同等」(※1)であるとされている。ちなみに、イルカの知能は3~6歳だそうだ。犬はやや落ちて2~3歳並みだという。豚はイルカやチンパンジーには及ばないが、犬ぐらいの知能はあるということになる。
■豚もおだてりゃゲームする!?
しかも、豚はビデオゲームもする(※2)。パデュー大学動物福祉科学センター所長のキャンディス・クロニーらは、豚が鼻で操作できるようにジョイスティックとモニターを低い位置に設置、単純なブロック崩しのゲームを表示した。
ゲームはシンプルな内容で、画面の四隅にブロックを配置、ジョイスティックを操作してカーソルがブロックにぶつかるとブロックが消えるというもの。ブロックが全部消えるとプレイヤー(豚)にはおやつが与えられた。
しかも、注目すべきはこの繰り返しで、おやつがなくても豚たちはゲームで遊ぶようになったという。クロニーいわく、チンパンジーほどではないが、豚も知的なチャレンジを行なえたのだ。
「3歳児並みでゲームもできるなんて……じゃあブタさんも食べちゃダメ!」と早とちりしないように。どんな生き物でも調べてみると意外に高い知能を持っているもので、「知能がある=食べちゃダメ」理論でいくと、ほぼ食べるものなど無くなる。たとえば、みんな大好きなお寿司やフライも、その理論で行くと「食用NG」となってしまう驚くべき研究成果が発表されているのだ。
そんな「驚異的な知能を持っていた意外な生き物」のお話、続く中編では、日本人にはなじみの深い、アレとアレが登場するので、乞うご期待。
※1
「Thinking Pigs: A Comparative Review of Cognition, Emotion,and Personality in Sus domesticus」(Marino, Lori他 International Journal of Comparative Psychology, 28(1)2015)
※2
「Acquisition of a Joystick-Operated Video Task by Pigs (Sus scrofa)」(Candace C. Croney他 Front. Psychol., 11 February 2021 Sec. Comparative Psychology)