■イカは「簡単な算数」なら朝めし前?
「イカは算数ができる」
と言ったら、何をバカなと思うかもしれないが、イカは大雑把に数の多い少ないぐらいはわかるらしい(※4)。
実際、台湾の研究者が、「イカは数を数えられるかどうか」を調べるため、2つの箱にエビの数を変えて入れたところ、イカは常に数の多いほうの箱からエビを食べ始めたのだそうだ。5匹と4匹なら5匹のエビの入った箱から食べ、3匹と2匹なら3匹のエビの入った箱から食べた。エビが1匹多いかどうかの差をイカは見分けられるのだ。
ところで、児童心理の実験に「マシュマロテスト」というものがあるのをご存じだろうか? 子どもの前にマシュマロを1個置き、「15分食べずに待てたら、もう一つあげる」という。子どもがより大きな満足感のために今の欲求を自制できるのかどうかを、家庭環境や学業成績などと関連付けた実験だ。
なお、マシュマロテストが提唱された当時は「貧困家庭のほうが我慢できない子どもが多い」、「テストをクリアした子どもは成績が良かった」などと言われたが、現在は否定されている。つまり、自制心と家庭環境は無関係。成績も無関係。ただし、少なくとも自制心があるかどうかはわかる。
■イカは怠惰なおっさんより自制心がある!?
ケンブリッジ大学心理学部のアレクサンドラ・K・シュネルらは、コウイカというイカにマシュマロの代わりにエビを与える実験を行なった。イカは死んだエビよりも生きたエビが好きだ。そこで死んだエビを与えた後、時間差で生きたエビを与えるということを何度か繰り返し、死んだエビを食べなければ生きたエビを食べられると覚えさせた。
イカは死んだエビを食べるのを我慢し、生きたエビが出るのを待つようになった。最大2分間、我慢できるようになったというから立派なものである。
同大学のポーリン・ビラールらは、コウイカの好物がエビであることを利用して、別のマシュマロ実験を行なった。コウイカがあまり好きではないカニを昼間に与え、晩ごはんを好物のエビにした。そして、昼のカニを食べる量を測定したのだ。するとコウイカは、この「昼カニ・夜エビ」のメニューを覚えると、昼にカニを食べる量を明らかに減らし始めたのだ……昨日の夕食が何だったか思い出せないわれらオッサンたちよりも偉いぞ、イカ!
昼カニ夜エビのパターンを崩し、昼エビだったり昼夜カニだったりに変えると、とりあえず何でも食べるようになった。パターンを理解し、それが崩れたことも理解したのだ。頭がいいぞ、イカ。
イカがこれだけ賢いのなら、似たような姿のタコはどうなのか? 彼らも賢い?