■体の炎症がうつ病の原因だった!?

キレるネコ

うちのネコがいつも機嫌が悪いのも、炎症のせいだったりして?

画像:写真AC

 サイトカインとは炎症を引き起こす物質で、俗に“炎症物質”と呼ばれる。やけどで皮膚が赤く腫れるのも炎症、蚊に刺されて赤く腫れるのも炎症、炎症は体を守る反応だが、度を超すと逆に健康を害する。花粉症がいい例だ。体が花粉に過敏になり、すぐ鼻の粘膜に炎症を起こしてしまう。

 

 そして、最近になって、サイトカインと性格の関係がわかってきた。たとえば幼児期に虐待された人の中には、極度に暴力的な人がいる。これはストレスでサイトカインの一種「インターロイキン6」が上昇したのが原因らしいのだ。

 

 インターロイキン6は“悪玉サイトカイン”と呼ばれ、過剰に分泌されるとリウマチなどの自己免疫疾患を引き起こし、悪性腫瘍や歯周病も悪化させる。コロナの時に病状を悪化させた「サイトカインストーム」を引き起こしたのもインターロイキン6だ。

 

 このインターロイキン6が増えると、全身の炎症が悪化する。それが攻撃的な性格につながるらしい。全身が炎症を起こせば、イライラもするだろう。すぐにキレる子どもには、もしかするとカウンセリングよりも炎症を抑えるように食事を見直すほうがいいのかもしれない。

 

■腸を治せばうつは治るかもしれない

目覚め

頭の健康はお腹から。お腹を治せばうつも吹っ飛ぶ?

画像:Shutterstock

 サイトカインによって炎症が起こったマウスは集中力が下がり、周囲への関心が下がり、食事の量が減る。これはうつ病の初期症状と酷似する。さらに、人間の治験ボランティアに炎症性サイトカインを活性化させるリポ多糖体(注1)を投与する実験では、「微熱・不安・抑うつ・認知機能障害・食欲低下」と、これまたうつ病でみられるものと似た症状が引き起こされた(※1)

※1「免疫系:脳と精神疾患の架け橋」(堀川 英喜 Japanese Journal of Biological Psychiatry Vol.25, No.2, 2014)
注1/lypopolysaccharide,LPS

 

 この実験結果からもわかるように、ストレスのために腸内環境が悪化、全身で炎症が起こることでうつ病が発症するらしいのだ。では、なぜSSRIがうつ症状の改善に効くと考えられたのか? 実はSSRIにはセロトニンへの作用とは別に、抗炎症作用があったのだ。つまり、セロトニン阻害がまったく効果がないとは言わないが、むしろ抗炎症作用のほうがうまく働いたのだ。

 

 うつ病のようなストレス由来の精神疾患では、慢性的な炎症が見られる。その原因は大腸の腸壁のバリア機能が壊れて、菌が全身に流れ込むためらしいのだ。具体的なイメージはこんな感じ──。

 

 腸壁には厚いゼリー状の粘液があり、腸内と腸外をしっかり隔てているが、腸内環境が悪化するとこの粘液バリアが薄くなり、穴が開いてそこから腸内細菌が血液中に流れ込む。もともと自分の腸内にいた細菌だとはいえ、体にとっては病原菌と同じなので、免疫は攻撃を開始、炎症が起きる。

 

 つまり、大腸のバリア機能をしっかり保てれば炎症は起きず、うつ病の発症も抑えられるということになる。となれば、将来、うつ病の薬はなくなり、うつ病になったら抗生物質や抗炎剤を飲み、ヨーグルトを食べて治すことになるかもしれない。