■海藻でやせるは本当? 食べ物と腸内細菌
本来、食えないモノをエサにわれわれを日一日と太らせるデブ菌の恐ろしい能力に戦々恐々としている読者も少なくないだろう。しかし、反対に「やせる菌」もいるのでご安心を。
花王と弘前大学、東京大学の共同研究で、腸内にブラウティア菌が多い人は内臓脂肪が少なく、逆にこの菌が少ない人は多いことがわかった。また、糖尿病、肝硬変、大腸がん、関節リウマチの患者は腸内にブラウティア菌が少ないことも判明。つまり、ブラウティア菌が少ない人は太りやすい。その結果、生活習慣病にもかかりやすくなる(※4)。どうか俺の腹にいてくれ、ヤセ菌、ブラウティア!
※4 「内臓脂肪と腸内細菌の関係についての研究」(花王ニュースリリース 2019年10月28日)
また、「ダイエットには海藻だよね~」とワカメやモズクをもりもり食べている方もいるだろう。実はそれ、科学的に正しい。本当に海藻もやせるらしい。というのも、慶応大学の研究で、海藻に含まれるネバネバ成分、アルギン酸ナトリウムが腸内細菌の構成を変え、炎症を抑えるのだそうだ(※5)。炎症なければ肥満なし。改めて肥満とは病気なのだとわかる。
※5 「Seaweed Dietary Fiber Sodium Alginate Suppresses the Migration of Colonic Inflammatory Monocytes and Diet-Induced Metabolic Syndrome via the Gut Microbiota」(江島隆太他 Nutrients 2021, 13(8), 2812)
ただし、「デブ菌がいたら太る、ヤセ菌がいたらやせる」という単純な話でもないらしい。腸内細菌が肥満と関係しているのは間違いないが、男女で腸内細菌叢のバランスが真逆の部分があったり、やせているマウスに繊維質の食事をさせたら太り始めたが、肥満マウスは体重が変わらなかったなど、まだまだ研究の余地が残っているのだ。
腸内細菌が脳にどこまで影響するのか、健康にどう影響するのか、まだわからないことだらけだ。腸内には100種類以上、100兆個以上もの腸内細菌が棲んでいて、そのごく一部分しか正体はわかっていない。お腹にいいとされている乳酸菌も本当にいいのか、研究者によって意見が分かれている。
未来の教科書に腸内細菌のことがどう書かれるのか、それがわかるのはまだもう少し先になりそうだ。