動物について何となく信じられていることは、今日も今日とて変わり続けている。昭和の常識が令和の非常識どころか、昨日の常識が今日の非常識だから困る。まずはシマウマのシマについて。あのシマ模様、何のためにあるのか、知ってます?
■シマウマのシマは数学的に解明できる?
シマウマは目立つ。大阪にあるホテルのバーが絨毯(じゅうたん)も椅子(いす)もゼブラ柄で、さすが大阪やで~と感心した。商店街の服屋は店先にアニマル柄のすごい服を売っていて、圧倒的に目立つのがトラ柄とゼブラ柄。白黒のコントラストは、目を引くのだ。
ゼブラ柄やトラ柄以外にも、動物の柄は千差万別、カラフルで多様だ。あのような動物の模様はどのように決まるのだろう? シマウマにゼブラ柄遺伝子があって、それで決まるのだろうか?
現代のコンピュータの基礎を築いた天才数学者、アラン・チューリングは、2種類の濃さの違う液体が自然と混じる時に波を起こすと、濃い部分と薄い部分のムラができ、それがパターン=模様を作ることに注目した。そこで液体のシミュレーションを公式化し、反応拡散方程式として発表した。この方程式を解くとさまざまな模様を描くことができる。これをチューリング・パターンと呼ぶ。
■動物の模様は体内の「波」で生み出される!?
チューリング・パターンはどういうわけかゼブラ柄やヒョウ柄などの動物の模様にそっくりだ。これは偶然なのか、それとも動物の模様は遺伝子ではなく、反応拡散方程式に従って、液体がまじりあうような物理現象で決まるのか?
どうやら動物の模様は遺伝子で決まるのではなく、物理現象の結果らしい。
動物の柄を作り出すのは、生き物の体の中で起こる化学反応の「ゆらぎ」だ。生き物によって神経同士のつながり方や化学物質の濃度に違いがあり、それはチューリング博士の反応拡散方程式に従ってパターンを作る。
大阪大学大学院生命機能研究科パターン形成研究室の近藤滋教授は、体の中で化学反応のゆらぎ、つまり「波」が生まれ、この波によってチューリング・パターンが発生して、生き物の模様が生まれることを実証した※1。
※1「A reaction?diffusion wave on the skin of the marine angelfish Pomacanthus」(Shigeru Kondoほか Nature volume 376, pages765?768 1995)
動物の柄には遺伝子で模様が決まっているタイプとチューリング・パターンのタイプがあるらしいのだ。犬や猫の模様は遺伝子でほぼ決まっている。一部、環境によって変わる部分があるが、基本は遺伝子だ。