■シマウマの縞模様は波紋の一種だった

キリンの模様もチューリング・パターンだ。

画像:Snakes3yes, CC BY 2.0 , via Wikimedia Commons

 一方、シマウマは違う。シマウマにはシマウマ模様になる遺伝子があるわけではないのだ。キリンにキリン模様の遺伝子はなく、ヒョウにヒョウ柄遺伝子はない。胎児の時に毛を生えさせる細胞の位置が体内の化学物質の濃度の違いや振動で変化して、あのような柄模様を作り出す。

 

 チューリング・パターンで生まれる模様は、多くの場合、大人になるまで変化し続ける。生まれた後の環境の影響を受けて、模様は変わっていく。後述するようにシマウマの模様は気温が高い場所と低い場所で違いがあるが、これは温度で細胞の位置や色素の表れ方が変わるためだ。

 

 パンダは……パンダもだ。パンダ柄遺伝子はなく、ガングロギャルを黒くするメラニン色素の細胞と同じような色素細胞が目の周りや耳に集まった結果、あのキュートな白黒模様が生まれる。

 

■浪花のおばちゃんもチューリング・パターン!?

 人間の指紋もチューリング・パターンにあてはまる。体内の波紋が指先に刻まれる。人は身長も体重も内臓の大きさも千差万別、当然、体の中で生まれる波も波長や周波数が違っている。道理で同じ指紋の人間が2人といないわけだ。

 

 水の波紋のように、体の中を反響する波が模様を生み出す。何でもかんでも遺伝子で説明しようとするのは間違いで、体の中に響く波=音楽が波紋を生み、皮膚に動物の豊かな模様を刻むのだ。

 

 シマウマのゼブラ柄は遺伝子ではなく「波」から生まれる、これが新しい理科。そう考えると、全身アニマル柄をまとった大阪のおばちゃんも詩的に美しく見えてくる。うねる波紋は……浪花節かもしれないが。