■シマウマはなぜシマウマなのか
動物が今の形になったのには理由がある。象の鼻が長いのもキリンの首が長いのも、それが生き残るために有利だったからだ。進化論でいう適者生存と自然淘汰だ。
さまざまな突然変異が起こって遺伝子が変化し、姿かたちの違う動物が生まれるが、生き残るのはその中で一番環境に適応したやつらだけ。人間には目立ってしょうがなく見えるシマウマのシマ模様も、シマウマが生き残るために有利な理由があるはずだ。
昔の子供向け動物図鑑には、シマ模様が草原では迷彩になると書かれていた。ライオンやヒョウから見えにくくするためのシマ模様だ。肉食動物は色がわからず、視界が白黒に近いため、シマウマのシマ模様と背景の木立や草の区別がつきにくいという。
もっともらしいのだが、ネコ科動物は人間のように赤・緑・青の三原色ではなく、実は緑と青の二原色で世界を見ている。つまり、人間とは見え方は違うが、白黒ではないのだ。ネットでちょっと検索しても、ネコ科動物は世の中を白か黒かで見ているという解説がいくつもあった。そんな裁判所みたいなことはない。間違いです。
だからシマ模様が保護色になるかといえば、かなり怪しい。シマ模様が背景に溶け込む説は、かなり嘘くさいのだが、群れの中で紛れてかく乱するという意見には賛成だ。シマウマの群れの写真を見ると、どこに何匹いるのか、こんがらがって目が回る。ライオンも自分が狙っていた獲物を見失い、混乱するだろう。
■シマウマの模様は体温調整?
カリフォルニア大学生態学進化生物学部のブレンダ・ランソンらは、シマウマの模様には複数の役割があるとした上で、体温調整の要素が強いと結論づけた※2。シマウマの模様は地域によって異なり、赤道に近い=気温が高い地域ほど縞模様がくっきりと鮮やかで、南端の寒い地域へ行くほど模様があいまいになる傾向がある。
※2「How the zebra got its stripes: a problem with too many solutions」(Brenda Larisonほか The Royal Society Publishing 01 January 2015)
縞模様がチューリング・パターンで、遺伝子ではなく環境の違いで決まるのなら、こうした地域ごとの変化も納得がいく。気温の影響はシマ模様のパターンを変化させるのだろう。
シマウマの体温は同じ地域の他の草食動物に比べて体温が3度ほど低いという、これは縞模様のおかげで、皮膚の表面に空気の層ができるためなのだそうだ。黒い縞は熱を吸収しやすいので熱くなり、白い部分と温度差ができる。温度差で空気がくるくると回転し、薄い空気の層を作るのだそうだ。この空気の層が外気の熱を遮断し、シマウマを涼しくする。