■地球の周波数と反発してハチは飛び立つ?
昆虫の羽ばたく音(例えば蚊の「ブーン」という音も)を羽音周波数といい、ハチはおよそ170~200Hzだ。甲高い蚊の羽音周波数は350~600Hz。ようは羽根を1回動かすと空気が波打って1周波数となるわけだ。え~と、じゃあ蚊は毎秒600回も羽ばたいているんですかあ? 羽ばたいています。虫をなめるな。
一方、「超音波」と言われるものは2万Hz以上なので、まったく周波数帯が違う。もちろん、超音波でなくても理論的には音響浮遊は起こせるが、指向性が弱く、音圧も高くなり、非常にうるさいうえになかなか浮かない。ハチの羽音ぐらいでは、音響浮遊は無理だ。
「地球の音と反発する」という説もある。地球にはシューマン周波数という7.83Hz~から段階的にいくつかの特定の周波数を持つ電磁波がある。電磁波なので音とは無関係のはずだが、ハチの体の中で音が電磁波に変換されて、その周波数がシューマン周波数と一致すると浮くという。
よくわからない説明で、じゃあ7.83Hzの電磁場を出すジェネレーターは軽くなったり、宙に浮いたりするのか? それはないだろう。誰が言い出したのか、まったくありえない。
■謎のロシア科学は蜂の巣にこだわる
2001年に没したロシアの科学者ヴィクトル・ステパノヴィッチ・グレベニコフは、昆虫は電気の反発力を利用して飛んでいると信じていた。
グレベニコフは蜂の巣のハニカム(六角形)構造が生物に影響するという空洞構造効果 (CSE)を発見した。蜂の巣構造で育てた植物は成長が早く、時計をそばに置くと時計が狂い、ひもに結んでビンに吊るした木の枝は蜂の巣構造を向けると回転を始め、人間の頭上に置くと頭痛が治るとグレベニコフ。彼の提案で、ノボシビルスクにある農業科学博物館には、ミツバチの巣が吊るされ、その下に座る展示があるそうだ。
幾何学模様からエネルギーが出て、生物に影響するというのは、70年代に流行ったピラミッドパワーやヒランヤ同じで、おまじないの世界である。おまじないをそれっぽく科学用語で語るのは、オカルトの基本であり、グレベニコフはピラミッドパワーの実験もしている。そっちの人なのだ。
こうした異端の研究が世に出ないのは、ロックフェラー財団やフリーメーソンといった謎の組織が圧力をかけているからと邪推する人もいる。しかし、それは科学者の名誉心と好奇心をなめている。STAP細胞はあります! のSTAP細胞騒ぎでも、世界中が再試験を行ない、そんな現象は起こらないと結論したように、とりあえずはやってみるのが科学者だ。
本当に人体や機械に影響があるなら、科学者は見逃さない。だが、他の科学者が追実験すらしていない。相手にもされていない。お察し……というやつだ。