当連載の第5回で、「三条寺町の怪物件」について語ってくれた怪談師のCocoさん。SNSの総フォロワー数は30万人を超え、“ホラーの名門”竹書房怪談文庫では著書を2冊出版。お化け屋敷をつくるホラープランナーとしても活動しており、ホラー界でいま最も注目を浴びている人物だ。

 

 自らの足で心霊スポットを巡ること、なんと1000回以上! さらには好きが高じてプライベートでも事故物件に住んでいるのだとか……。そんな京都が誇る最恐の怪談師Cocoさんに、今まで体験した不思議な話を語ってもらった。

 

■『ぬ~べ~』がきっかけでオカルトの世界へ

Coco

怪談師、お化け屋敷のプランナーとして活躍するCocoさんの原点は週刊少年ジャンプで大人気だった怪異マンガの傑作『地獄先生ぬ~べ~』だった!

Cocoさんの最新情報はこちらから→X&Instagram:@coco_horror

 怪異の都、京都を拠点に怪談師・ホラープランナーとして活躍するCocoさんだが、もともとはYouTubeで怪談を朗読する動画をひっそり投稿していたそうだ。だが、2019年に出場した「竹書房主催 第2回 怪談最恐戦 大阪予選会」がきっかけとなり、本格的に怪談師の道を歩むこととなった。

 

 そこからわずか4年ほどの現在では、SNSの総フォロワー数も30万人を超え、『京都怪談 猿の聲(こえ)』(共著)、『怪談怨霊館』(ともに竹書房怪談文庫)と次々に著作も発表、名実ともにホラー界のインフルエンサーとして注目を集めている。

怪談怨霊館
怪談怨霊館

Cocoさんが京都で蒐集した、あるいは自ら体験した、とっておきの実話怪談を収録。異界としての京都に興味津々の方はぜひご一読を

「京都の怪異」を軸に様々な顔で活躍するCocoさん、いったい何がきっかけで、心霊やオカルトの世界に魅せられたのだろうか。

 

「子供の頃に観た『地獄先生ぬ~べ~』と『怪談レストラン』が私の原点です。どちらの作品も、オバケがたくさん出てきてキャラクター性もあるところに魅力を感じました。昔のホラー作品って、ゾッとする描写はあってもオバケをがっつり見せないものが多いじゃないですか。でも『ぬ~べ~』や『レストラン』は前面に出してくれるので、『こんなオバケや妖怪がいるの』と、子供心にわくわくしましたね。そこからオカルトが好きになりました」

 

 その頃の名残りで、今でも幽霊が派手に登場する洋画ホラーを好んで観るそうだ。さらに、ホラー作品を観るだけにとどまらず、「全国600カ所、1000回以上は訪れた」 という心霊スポットに興味を持ったのは、高校生の頃だったとCocoさんは語る。

 

心霊スポット巡りのため免許も取得の“ガチ勢”ぶり!

「夏休みに友達とお泊り会をしたとき、話の流れで『肝試しをしよう!』となって。地元の小さな神社に行ったんですが、夜中なので真っ暗なんですよ。みんなで『怖い!』『オバケ出そう!』とはしゃいだのが、本当に楽しかったんです。その夜の楽しさが心に刺さって抜けないまま、気づけば600カ所もの心霊スポットを訪れていました。撮影のため何度も通った場所もあるので、通算だと1000回は超えてますね」

 

 いやいや「気づけば600カ所」 って、かなりの変わり者……もとい探求心だが、なんと、心霊スポット巡りのためにバイクの免許を取得したほどの本気っぷり。

 

Coco&Bike
心霊スポット巡りの「相棒」とCocoさん(かっこええわあ)。

「車だと行きにくい場所も多いので、バイク移動のほうが便利なんですよね」

 

 そうサラリと語るCocoさんだが、心霊スポット巡りのため免許まで取るとは行動力も並外れている。しかし、そんな探求心と行動力の結果、なんと、ご自身が“怪異”になりかけた現場もあったのだとか……。

 

心霊スポットでCocoさん自らが“怪異”に!?

厨子奥トンネル
何の変哲もない住宅街の間に存在する京都有数の心霊スポット「厨子奥トンネル」

「京都の厨子奥(ずしおく)トンネル(※1)に行ったときのことです。住宅街の中にあって、墓地に囲まれたトンネルなんですね。“あの世とつながっている”と言われていて、かつてはトンネルの中の壁に観音様の絵が描かれていました」

注1 京都市山科区にある、京都で一二をを争う心霊スポット。クルマは通れず歩行者と自転車のみ通行可なのでご注意を。

 

 誰が何の目的で描いたのか分からない観音図。今では塗りつぶされているが、「絵にいたずらをすると祟られる」「精神がおかしくなってしまう」などのウワサがあったそうだ。

 

ある冬の日の深夜2時、白いコートを着て厨子奥トンネルへ行ったんです。スマホで配信しながら探索していると、自転車に乗った人が通りかかって……私を見て、『ぎゃーーーー!』と叫び声を上げたんです(笑)」

 

 心霊スポットとして名高い場所で、深夜に白い服を着た髪の長い女と遭遇。しかもひとりで何やら喋っているわけだから、通行人にとってはとんでもない恐怖だったろう。

 

Coco&厨子奥
ただでさえいわくつき付きの場所で深夜に遭遇したら……

 ちなみに、厨子奥トンネルを抜けると旧東海道へ合流する道が続く。その先にあるのは「粟田口(あわたぐち)刑場跡」だ。平安時代後期より刑場として用いられ、約1万5千人が処刑されたといわれている。かの明智光秀の首が晒された場所でもあり、首無しライダー発祥の地で知られる「将軍塚」との距離も近い。

 

 さらに、刑場跡を北に進むと「蹴上(けあげ)と呼ばれるエリアに入る。なんとも奇妙な古都・京都らしい地名だが、その由来にも、

「処刑を拒んだ罪人たちを役人が後ろから蹴り上げて刑場まで連れて行ったから」

「処刑された罪人の首がゴロゴロと転がっていて、蹴り上げるほど無数にあったことから」

など、血なまぐさい伝説が囁かれているそうだ。

 

 そんないわくが密集するエリアで、Cocoさんは新たな怪談話の当事者になってしまったようだ……。続く後編では、心霊スポット巡りでCocoさんが遭遇した「リアルな命の危険」や、好きが高じて事故物件に住むに至った経緯と、そこで体験した不可解な事件など数々の奇妙なエピソードを紹介するので、乞うご期待!