■松本まりかと同い年の“老夫婦”!?
アシナヅチの説明によれば、夫婦には8人の娘がいたが高志国(こしのくに)から襲ってくるヤマタノオロチという怪物に、毎年一人ずつ食べられてしまった。今年も、オロチがくるころなので、クシナダも食べられてしまう。それで、なげき悲しんでいたのだ。
アシナヅチとテナヅチの年齢はわからないが、9番目の末娘であるクシナダとは、かなり年が離れていると考える方がいるかもしれない。
余談にはなるが、おとぎ話の「一寸法師」で法師は老婆から生まれたが、このとき老婆の年齢は41歳。当時は数え年なので満年齢で39歳か40歳のアラフォーだ。
39歳であれば橋本マナミ(1984年8月生)や松本まりか(同年9月生)、40歳ならベッキー(1984年3月生)や小倉優子(1983年11月生)と同い年である。テナヅチもそれくらいの年だと考えられるので、必ずしも高齢出産というわけではない。
■怪物退治を決意の裏に下心?
困り顔の女の子はカワイイ。グスグスとハナをすすりながら、泣いている表情は可憐だ。その感覚はスサノオも例外ではなく、クシナダに惹かれてしまった。
「では、そのヤマタノオロチとかいうのは、どんな怪物なのか?」
このとき、スサノオは怪物退治を決心する。もちろん、その目的はクシナダである。クシナダを助け、「ありがとうございます!」と胸に飛び込んでくる少女を、自分のものにする。下心丸出しだ。
アシナヅチは、ヤマタノオロチの姿を説明する。目はホオズキのように真っ赤で、一つの胴体に八つの頭と八つの尾があり、身体にはヒノキやスギなどの木が生えていて、その長さは八つの谷、八つの峰にわたり、腹一面に血がにじんでただれている、という。
どれだけの大きさか想像を絶し、さすがのスサノオも度肝を抜かれたであろう。だが、クシナダは自分を救ってくれるものだと確信し、両手を組んでスサノオを見つめているに違いない。もちろん、その目にはいっぱい涙をためて……。
■交渉成立!いざ怪物との決戦へ──
「クソ! しかたねえなぁ」
怪物のあまりの大きさに戸惑いはしたが、もはやあとには引けない。ただし、交換条件として、オロチを退治したあかつきにはクシナダを妻にしてもいいかと、とスサノオはアシナヅチにいう。
「しかし、どこのどなたか存じませんので」
そうアシナヅチがいうと、「わたしは天照大神(アマテラスオオミカミ)の弟だ。いま高天原から下ってきたところである」とスサノオは答える。もちろん、高天原をメチャクチャにして追放されたことは内緒。
「おお、そのような立派な方なら、娘をさし上げましょう」
と、あっさり交渉成立。スサノオは、「オレの嫁(仮)」のクシナダを守るためにヤマタノオロチとの決戦を覚悟したのである──(スサノオVSヤマタノオロチのある意味「怪獣大戦争」の結末は次回乞うご期待)。
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