■松本まりかと同い年の“老夫婦”!?

須佐神社拝殿
島根県出雲市にあるスサノオを祀った「須佐神社」にはクシナダヒメ、アシナヅチ・テナヅチも祀られている。 画像:Naokijp, CC BY-SA 4.0 , via Wikimedia Commons

 アシナヅチの説明によれば、夫婦には8人の娘がいたが高志国(こしのくに)から襲ってくるヤマタノオロチという怪物に、毎年一人ずつ食べられてしまった。今年も、オロチがくるころなので、クシナダも食べられてしまう。それで、なげき悲しんでいたのだ。

 

 アシナヅチとテナヅチの年齢はわからないが、9番目の末娘であるクシナダとは、かなり年が離れていると考える方がいるかもしれない。

 

 余談にはなるが、おとぎ話の「一寸法師」で法師は老婆から生まれたが、このとき老婆の年齢は41歳。当時は数え年なので満年齢で39歳か40歳のアラフォーだ。

 

アシナヅチ・テナヅチのアップ

画像は粗いが大事なのでもう一度。松本まりかと同じアラフォー世代だ……。

画像:出雲国肥河上ニ八俣蛇ヲ切取玉ヲ図/豊原周延・画(一部), PD, via Wikimedia Commons

 39歳であれば橋本マナミ(1984年8月生)や松本まりか(同年9月生)、40歳ならベッキー(1984年3月生)や小倉優子(1983年11月生)と同い年である。テナヅチもそれくらいの年だと考えられるので、必ずしも高齢出産というわけではない。

 

 

■怪物退治を決意の裏に下心?

 

 困り顔の女の子はカワイイ。グスグスとハナをすすりながら、泣いている表情は可憐だ。その感覚はスサノオも例外ではなく、クシナダに惹かれてしまった。

 

「では、そのヤマタノオロチとかいうのは、どんな怪物なのか?」

 

 このとき、スサノオは怪物退治を決心する。もちろん、その目的はクシナダである。クシナダを助け、「ありがとうございます!」と胸に飛び込んでくる少女を、自分のものにする。下心丸出しだ。

 

ヤマタノオロチ
生成AIに描かせたヤマタノオロチ。何度やっても頭が2本足りない……。 画像:Shutterstock

 アシナヅチは、ヤマタノオロチの姿を説明する。目はホオズキのように真っ赤で、一つの胴体に八つの頭と八つの尾があり、身体にはヒノキやスギなどの木が生えていて、その長さは八つの谷、八つの峰にわたり、腹一面に血がにじんでただれている、という。

 

 どれだけの大きさか想像を絶し、さすがのスサノオも度肝を抜かれたであろう。だが、クシナダは自分を救ってくれるものだと確信し、両手を組んでスサノオを見つめているに違いない。もちろん、その目にはいっぱい涙をためて……。

 

 

■交渉成立!いざ怪物との決戦へ──

 

「クソ! しかたねえなぁ」

 

 怪物のあまりの大きさに戸惑いはしたが、もはやあとには引けない。ただし、交換条件として、オロチを退治したあかつきにはクシナダを妻にしてもいいかと、とスサノオはアシナヅチにいう。

 

「しかし、どこのどなたか存じませんので」

 

 そうアシナヅチがいうと、「わたしは天照大神(アマテラスオオミカミ)の弟だ。いま高天原から下ってきたところである」とスサノオは答える。もちろん、高天原をメチャクチャにして追放されたことは内緒。

 

「おお、そのような立派な方なら、娘をさし上げましょう」

 

 と、あっさり交渉成立。スサノオは、「オレの嫁(仮)」のクシナダを守るためにヤマタノオロチとの決戦を覚悟したのである──(スサノオVSヤマタノオロチのある意味「怪獣大戦争」の結末は次回乞うご期待)。

 

【参考資料】
『古事記(上)全訳注』
次田真幸・訳注(講談社学術文庫)
『日本書紀(上)全現代語訳』宇治谷孟・翻訳(講談社学術文庫)
『「作品」として読む古事記講義』山田永・著(藤原書店)
『古事記講義』三浦佑之・著(文春文庫)
『本当は怖い日本の神様』戸部民夫・著(ベスト新書)
『神道入門 日本人にとって神とは何か』井上順好・著(平凡社新書)
『神話のなかのヒメたち もうひとつの古事記』産経新聞取材班・著(産経新聞出版)
『三種の神器 <玉・鏡・剣>が示す天皇の起源』戸谷学・著(河出書房新社)
『八百万の神々 日本の神霊たちのプロフィール』戸部民夫・著(新紀元社)
『古代史悪党列伝』関裕二・著(主婦と生活社)
『図解 ふしぎで意外な神道』岡田明憲他・著(学研パブリッシング)
『神、人を喰う 人身御供の民俗学』六車由美・著(新曜社)