■3・11の直前に出現した謎の狸?

3・11の時、狸たちも地震を予知し、ストレスで毛が抜けた?

画像:I, Pkuczynski, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia CommonsWikicommons

 昔から動物は地震を予知すると言われてきた。たとえば3・11(東日本大震災/東北地方太平洋沖地震)が起こる1週間前、地元の猟師は“見たことのない狸”を見つけたという。それは毛がほとんど抜けた哀れな姿で、一頭のみならず、何頭も見かけた。皮膚病が流行っているのかと心配していたら、地震が来た。地震を予知したストレスで毛が抜けたんじゃないかと、後に猟師は語った。

 

 どうなんだろうか。動物は本当に地震が予知できるのだろうか。私は犬を飼っていたことも猫も飼っていたこともあるが、うちの連中は飼い主の俺たちよりよほど鈍感で、地震で家が揺れて、家族が騒いでいるのにあいつらだけはグーグー寝ていたけども。

 

■動物は地震を予知できるのか?

ネコ

猫が地震予知? うちの猫は寝たまま、まったく微動だにしなかったけども……。

画像:Shutterstock

 とはいえ、何かあるかもしれないと研究している人たちはいる。畜産関連の研究分野に強い麻布大学から発表された論文「地震の直前予測へ向けた動物の前兆的行動に関する研究」(※1)によると3・11の際のアンケート調査で、犬は18.7%(1259頭中236頭)、猫で16.4%(703匹中115匹)が地震の前に行動変化が見られたという。およそ5頭に1頭は、「落ち着きをなくす」(同論文)行動をしたようだ。

※1「地震の直前予測へ向けた動物の前兆的行動に関する研究」(山内寛之 麻布大学附置生物科学総合研究所紀要No.33 2022)

 

 しかし、飼い主の言うことは今一つあてにならない。「うちの子は神経質だから」と平気で言ったりする。人間の神経質の基準と犬猫の基準は違うぞ。

 

 そこで麻布大学の研究者たちは、猫、馬、亀の日常の動きを赤外線センサで1年間測定、地震との関係を調べた。すると「M(マグニチュード)6を超える地震の1週間前までに行動頻度が顕著に増加すること」がわかったというのだ。「特に猫では4回中3回、顕著な増加が確認された」という。

 

 うちの猫はボンクラだったが、地震に敏感な猫もいるらしい。

 

■乳牛は地震を予知していた!?

地震が近づくと乳量が減るという。体はデカいが、結構、ナーバスな乳牛たち

画像:Amélie Tsaag Valren, CC BY-SA 4.0 , via Wikimedia Commons

 ただ、動物の行動異常だけでは、今ひとつ信憑性に欠ける。発情期と重なったかもしれないし、ご飯が足りなかったのかもしれない。人間が一切干渉できない動物の変化はないのか? そこで乳牛である。

 

 乳牛はストレスで乳量が減少するので、地震の発生日と照らし合わせれば、影響の有無がわかる。さすが畜産の麻布大学、乳牛のデータはばっちり揃っているので、過去2年分、3カ所の乳牛のデータと地震発生を照らし合わせた。また、鶏の産卵率も同様に地震の発生と照合した。鶏もストレスがかかるとすぐに卵を産まなくなるのだ。

 

 すると、乳牛は3・11の3日前から6日前にかけて、震源地から最も近い距離(340km)の牧場で乳量の低下がみられた。また他の地震発生日でも比較したところ、M5以上の大きな地震では、15日前までに減少していることがわかった。また、鶏は東北地方太平洋沖地震が発生した7日前と9日前に顕著な産卵低下がみられた。

 

 ということは……やっぱり動物は地震を予知しているのでは?