■約300億円!「ギャンブルで世界一負けた」日系人「テレンス・ワタナベ」

 さらにさらに! ギャンブルの負け金額で、世界一になってしまったのが、アメリカ、ネブラスカ州オマハ出身の日系二世アメリカ人、テレンス(テリー)・ワタナベ氏だ。

 

 父親が設立したおもちゃなどの輸入販売会社、オリエンタルトレーディング社を引き継いで事業を拡大させ、2000年には「年商3億ドル(約429億円)」大企業に。2000年に全株式を投資会社に売却し、エイズ関連の団体に数百万ドルを寄付、オバマ政権下の民主党に50万ドルを献金するなど、慈善家として社会に貢献していた。

 

テレンス・ワタナベ

経営する店でのテレンス・ワタナベ氏。柔らかな表情の裏には勝負師の顔が……。

画像:8Asians|An Asian American collaborative blog/「Terrance Watanabe:The Biggesst Loser in Las Vegas」より

 こうした慈善家の顔とは裏腹に、ワタナベ氏には世界有数のギャンブラーという一面があった。莫大な資金を元手にワタナベ氏は地元のカジノ「ハラーズ・カウンシル・ブラフス」で常連になると、たちまちギャンブル沼に……。そして、その派手な勝負師ぶりから、ラスベガスの名門カジノ「シーザーズ・パレス」では、高額を賭けるハイローラーの中でもトップの「チェアマン」として破格の待遇で迎えられた。

 

シーザーズ・パレス
ワタナベ氏を破格の待遇で迎えたラスベガスの老舗カジノ「シーザーズ・パレス」。 画像:Shutterstock

 スイートルームを提供され、3人のスタッフ、飛行機のチケット、ギフトショップでの50万ドルのクレジットなどを提供されてカジノに入り浸った。多い時は24時間賭け続け、1回で500万ドル(約7億1500万円)負けることもあったとか。

 

 そんなワタナベ氏は2007年、1年間で1億2700万ドル(当時のレートで約148億円)負けてしまった。負債のほとんどは返済したが、「カジノが提供した酒とドラッグで、酩酊していた」として1400万ドル(約20億円)の返済を拒否し、シーザーズ・パレスと裁判に。ワタナベ氏の損失額は最終的に2億400万ドル(約313億円)に上る、と推定されている。

 

 2017年にはついに破産してしまったワタナベ氏は、ラスベガス最大の負け額で知られ、その人生はハリウッドで映画化される、という噂が囁かれている。

 

■その他、「負け額の多さ」で知られる有名ギャンブラーたち

 

 さらに世界では「トンデモない負け額」で知られるハイローラーたちがいる。以下に名前を挙げただけでも、これだけの面々がおり、なかには不審な死を遂げた人物もいる(なお、日本円の換算はそれぞれの事件当時のレート)。

 

1億3700万ドル(約209億9000万円);オマール・シディキ(Omar Siddiqui)
オーサフ・ウマル・シディキ(Ausaf Umar Siddiqui)とも。パキスタン系アメリカ人で米・家電量販店チェーン「フライズエレクトロニクス」の元副社長。高額のカネを猛スピードで賭け続ける姿から「ブラックジャックマシーン」のあだ名がついたハイローラーだったが、賭博の負債を埋めるため会社のカネ6500万ドルを横領し逮捕。1億3700万ドルの負債を抱え、2011年自己破産した。

 

1億2500万ドル(約191億5200万円) ジェンリ・イエ・ゴン(Zhenli Ye Gon)
上海生まれの中国系メキシコ人実業家で、メキシコ当局から違法薬物や麻薬の密輸で莫大な財産を築いたとされ、実際、家宅捜査の際には2億700万ドル、20万ユーロなど多額の現金や貴金属、自動小銃などが押収された。麻薬組織のシナロア・カルテルの一員として2007年に起訴された(後に一部棄却)。

 

4000万ドル(約38億円); アーチ―・カラス(Archie Karas)
ギリシャ系アメリカ人のギャンブラー。1992年12月、50ドル紙幣1枚だけを握ってラスベガスに向かい、わずか2年半後の1995年初めには4000万ドル(当時のレートで約38億円)を稼ぎ出した伝説のハイローラー。しかし、その年の後半、わずか3週間で4000万ドルすべてを失った。

 

2800万豪ドル(約20億円);ケリー・フランシス・ブルモア・パッカー(Kerry Francis Bullmore Packer)
オーストラリアのメディア王。2005年に亡くなる直前の総資産は65億豪ドル(当時のレートで約5200億円)で「オーストラリアで最も裕福な男」と言われた。その一方、根っからのギャンブラーで、1999年、ロンドンのカジノではわずか3日間で2800万豪ドル(同じく約20億円)以上負けて「英国史上、最も高額の負け額」と言われた。ちなみに息子のジェームズはマカオのカジノ王に。

 

1300万ドル(約13億4000万円); モーリーン・オコナー(Maureen O’connor)
元サンディエゴ市長で、全米5位(2005年)のハンバーガーチェーン「ジャック・イン・ザ・ボックス」創業者、ロバート・O・ピーターソンの妻。民主党系の社会活動家としても活躍したが、その一方で、94年に亡くなった夫が設立した財団の基金を使い込み、2000年~2008年にかけてギャンブルに溺れる。結果、1300万ドルを失った。彼女自身は脳腫瘍の手術の影響でギャンブル依存になったと語っている。

 

225 万ドル(約3億5000万円);ロバート・マクスウェル(Robert Maxwell)
イギリスの実業家・国会議員にして、一代でメディア帝国を築き上げたメディア王。1991年、大西洋での不審死にもギャンブルやビジネスで生んだ莫大な負債が絡んでいるとの説も。なお、エプスタイン事件の”首謀者”の一人、ギレーヌ・マクスウェルは実の娘(詳細はこちらの記事参照)。

 

 金額だけで見ると、大谷翔平選手の活躍で注目された水原一平氏は、かなりの上位にランクインすることになりそうだ。ただ、ほとんどの人物がバッドエンドを迎えており、水原氏もほぼ収監は免れないところ。自身も告白していたように、まずはギャンブル依存症の治療が進むことを祈りたい。