キャバ嬢を襲った「呪い」の恐怖

呪い

「呪い」……遠く古代から存在した人間の心の闇を浮かび上がらせる存在。

画像/写真AC

 突然だが、あなたは「呪い」を信じるだろうか?

 

「のろい」とも「まじない」とも読める言葉だが、実はこの2つではまったく意味が異なる。「のろい」は相手に災厄が訪れるように悪魔や神仏といった目に見えない存在に祈ることを指す。 一方、「まじない」は、人間よりも上位の存在に災厄や病気を除いたり、運の変更を願うことをいう。

 

 また、「のろい」は特定の人間に対して悪意を抱くときに使うのに対して、「まじない」は、特定の人間に対して悪意や災難から身を守るために使うという。今回は「のろい」とも「まじない」ともとれるものをかけられた(?)キャバクラ嬢の話をしよう。

 

私、呪われているんです。あの男に

煌びやかな夜の街、歌舞伎町のキャバクラでナンバーワンだったリオは今……。

(写真はイメージ) 画像:写真AC

 現在、地元S県の、とあるスナックで働くリオ(仮名)はもともと歌舞伎町でナンバー1キャバ嬢だった。現在28歳になるリオだが、今も見た目は現役キャバ嬢時代の頃とまったく変わっていない。歌舞伎町で働いていると言われれば、納得してしまうほどの若々しさだ。

 

「今からでもキャバ嬢に復帰すればいいじゃない」

 

 そう私が言うと、リオの顔つきが急に変わった。

 

……もう、歌舞伎町には戻りたくないんです」

 

 重苦しい口調でそう言う。数年前まで、現役バリバリで働いて、一時は「この仕事は天職だ」と言っていたリオの身に一体、何があったのだろうか。

 

「私、呪われているんです。あの男に……」

 

 そんな不可解なことを口にした後、リオはポツポツと当時、起こった出来事を語り始めた。

 

場違いな恰好で店に現れたSという男

 

 リオとその男「S」が出会ったのは今から6年前。リオがキャバクラに入店し、少しずつ客がつき始めた頃だった。

 

Sはひとりで来ていた客で初回から指名で来てくれました。当時、私はキャバ嬢としてSNSをやっていたので、時々そういうお客さんもいたんです。初回指名のお客さんって23人で来る人が多いんですが、Sは珍しくひとりでした。最初の印象はおとなしそうというか、どこか陰な雰囲気でしたね……」

 

 

 目が隠れるくらい長い前髪にヨレヨレのTシャツという恰好だったというSを見た瞬間、リオの中で「なんとなく注意したほうがよさそう」と、歌舞伎町で働くキャバ嬢ならではの勘が働いたという。

 

■席についてもほとんど黙ったまま…

本来なら楽しく飲む場だが男はただボソボソと返事をするだけだった

(写真はイメージ) 画像:写真AC

 歌舞伎町のキャバクラは私も働いていた経験があるのでわかるのだが、どちらかというとヤンチャだったり陽気な客が多い。もしくは普通のサラリーマンが団体で来ることが多いのだ。

 

 そのため、ひとりで、しかも初回から指名をする客は「ガチ恋客」(真剣にキャストに恋愛感情を抱いて店にくる客)の可能性が高い。そういう客は大体、粘着気質で下手すればストーカーになりうる可能性もある。実際に私自身も、そのような客とトラブルになったキャバ嬢を何人も見てきた。

 

「しかもSは全然喋らないんですよね。私が話しかけても小さい声で『……ああ』『……うん』とボソボソと言うだけなんです。もしかしたら、話がつまらないのかな? と思って頑張って喋ったんですが、それでも反応は薄かったです」

 

 Sはその日、ワンセットで会計をして帰っていった。それを見たリオは「さすがにもう来ないかもしれない」と少しホッとしたという。

 

■再び現れたSから渡されたメモには

 

「でも、それから1週間ほど経った頃、またSが店にやって来たんです。ちょっと怖いな……と思いながらも席につきました。するとSは私の手を握り、小さな紙を渡してきたんです」

 

 そこに書かれてあったのはSの自宅の電話番号と住所だったという。

 

「当時、お客さんとはLINEで連絡をとっていたので電話番号を教えるとかなかったんですよね。なのに、いきなり自宅の番号なんか書かれているものだから、本気で怖くなって……。しかも、私に携帯の番号を教えてほしいと言ってきたんです。その場では適当に誤魔化しましたが、店長に頼んで出禁にしてもらおうかと考えました」

 

 しかし、店長は「それくらい適当に誤魔化せば大丈夫」と言って、まともに取り合ってくれなかった。やがて、リオはどんどん売れていき、ついにナンバー1になった。

 

 そして、リオがナンバー1になって最初のバースデーイベントが訪れたのだが、そこでリオを恐怖の底に突き落とす「ある事件」が起こったのだ──。