これまで電脳奇談では「上陸した者には死あるのみ!──北センチネル島」、「猛毒の蛇40万匹に占領された島──ケイマーダ・グランデ島」、「旧ソ連の生物兵器実験場──ヴォズロジデニヤ島」などなど、世界のヤバい島についてお伝えしてきた。
そして、この広い地球上にはそんなヤバい島のなかでも、そのものずばり「死人島(Deadman’s Island)」という恐ろしい名がついた島がいくつか存在する。果たして、その名のとおり死体が積み上げられた島なのか、それともゾンビが徘徊する孤島なのか、あなたが、この名前から想像するのは、どんな島だろうか?
■200人の先住民族が惨殺された伝説の島
カナダのブリティッシュコロンビア州バンクーバーのスタンレーパークの南に、東京ドームの敷地面積より少し小さい「死人島(Deadman’s Island)」という島がある。
1862年にこの島を初めて訪れた白人入植者、ジョン・モートンは、木の上のほうの枝に何百もの箱が縛りつけられており、そのうちの一つが地面に落ちて壊れ、骨と黒い髪の束が出ているのを発見した。この島は、先住民族「スコーミッシュ族」の樹木墓地だったのだ。
この場所は敵対する部族との戦争が起こった場所であり、200人以上の戦士が惨殺された歴史があった。カナダに入植した白人たちはこの島を墓地として使用し続け、1888年から1892年にかけては、天然痘患者の隔離場所、埋葬地として使用した。
先住民族のスコーミッシュ族はこの島の名を語ることをはばかってか、ただ「島」と呼ぶだけだったが、1937年にカナダ政府は、なんと正式に「デッドマンズ・アイランド(死者の島)」と名付けた。伝統を尊重したのか、それともなんらかの因縁があったのか……。
さらに1944年にはカナダ政府の海軍基地になり、現在は海洋博物館が置かれている。この島に宿泊した軍の兵士は必ずと言っていいほど幽霊を目撃するという。先住民と白人入植者、2種類の支配者たちの戦地として、墓地として使用されたカナダの「死人島」は古の魂が彷徨っている場所なのだ。
■数百人の人骨が野ざらし!イギリスの死人島
イギリス、ケント州のメドウェイ川河口に「Deadman's Island」という小さな湿地帯がある。主に泥堤で構成される無人の土地で、満潮時にはいくつかの島に分かれる。非政府公共団体ナチュラル・イングランドが所有し、鳥の営巣、繁殖地として保存され、立ち入りが制限されている。
2016年、この場所で数百人以上の人骨が発見された。約200年前に存在した水上刑務所(監獄船)で死亡した囚人のもので、もともとは約2メートルの泥の下に木棺で埋葬されていたが、海岸侵食と海面上昇によって泥が流され、干潮時に遺体が露出。頭蓋骨、歯、大腿骨などが無数に散らばり、人々に恐怖心を与え続けている。島には木の柱が建てられていおり、「死者の墓標だ」と噂されている。
■地上から消滅したロサンゼルス沖の「死人島」
最後にもうひとつ、今は地上から消滅した「死人島」の話も。その島が存在したのはアメリカ・ロサンゼルス南部の港湾地区サンペドロの沖。
スペイン語で「Isla Del Muerto(死者の島)」と呼ばれたその島には、19世紀半ばの米墨戦争(アメリカとメキシコの領土戦争)で戦死した多くのアメリカ兵が埋葬されたとか、悪どい捕鯨船の船長が船員をムチで打ち殺し埋めた(しかも後に船長も毒殺される)とか、血なまぐさい伝説が語られていた。
後に捕鯨船の基地として整備され、港から伸びるグネグネとうねった堤でつなげられ、その形から「ラトルスネーク・アイランド(ガラガラヘビ島)」とも呼ばれた。しかし、20世紀初めには、港湾整備のため島が丸ごと浚渫され消滅。地上からその姿を消したのだが、その工事の際、2ダース〈24体)を超える不可解な人骨が発見されたという。
カナダとイギリス、アメリカ……遠く離れた土地に存在する「死人島」。不吉な名前をつけられた背景には、そうなるだけの不気味な歴史が存在しているのだ。