■大阪屈指の繁華街に鎮座する「歯神さん」

歯神社
こじんまりした雰囲気の歯神社。しかし霊験はあらたか。

 どんなに屈強で我慢強い人でも、耐えることのできない痛み!

 

 そう言われているのが「歯痛」だ。ドクドクとした脈打ちに合わせてズキズキと襲ってくる歯の痛みは、身体全体の神経が悲鳴を上げ、骨格がきしむほどの激痛をもたらす。痛みだけでなく、ホワイトニングに歯列矯正といった美容の面でも、歯は大切な部分だ。

 

 そんな「歯」に関する御利益のある神社が、大阪イチの繁華街・キタのど真ん中に鎮座。その名も「歯神社」である。

 

【歯神社関連写真/全8枚】

 

 最寄りの駅は大阪メトロ御堂筋線の梅田駅、もしくは阪急か阪神の大阪梅田駅およびJRの大阪駅。どの駅から降りても距離や時間に、さほど大きな差はない。各駅からJRの高架下に設けられたショッピングモール「EST」へ。ESTのウエストエリアからセントラルエリアを抜け、フードホールの前を右折した先に歯神社の社はある。

 

■洪水を「歯止め」が「歯痛止め」に変化

歯神社/なで石
拝殿の脇に鎮座する「なで石」。これをなでた手で患部をさすると痛みが鎮まるとか。

 主祭神は歯神大神 、愛称は「歯神(はがみ)さん」。もともとは、この地にあった巨石を地元民が信仰していたが、のちに宇賀御魂神(うかのみたまのかみ)を祀るようになる。この宇賀御魂神は、いわゆる稲荷神のこと。つまり、歯神社は稲荷神社だったのだ。

 

 稲荷神社となってもご神体として祀られていた巨石は、江戸時代中期に大洪水が起きた際に水の流れをせき止めて梅田の水没を防いだ。そのことから「歯止めの神様」と呼ばれるようになり、幕末頃には「歯止め」が「歯痛止め」に転じたとされる。

 

 歯に関する御利益に特化していることから、歯科医や歯科技工士など歯に関する医療関係者や、歯ブラシ、歯磨き粉などの製造にかかわる人の参拝も多いという。

 

 神社そのものは本当に小さなお社で、鳥居をくぐればすぐ目の前に本殿。本殿の前には「なで石」という丸い石が安置されていて、これをなでてから歯の痛いところを擦れば痛みが和らぐという。

 

■歯神社を管理する綱敷天神社御旅社

 

 2坪あるかないかの狭い境内にあるのは、本殿、なで石のほかに神木のイチョウだけ。無人なので、お守りやおみくじを購入することもできない。では管理しているのはどこか? というと綱敷天神社(つなしきてんじんしゃ)。網敷天神社には本社と御旅社(おたびしゃ)があり、歯神社のお守りや御札を授与するのは御旅社のほうだ。

 

 歯神社から約6分、北方向に歩くと綱敷天神社御旅社に到着。急な階段をのぼった先に拝殿があり、右側にお守りや御札などの授与所がある。また、境内の左には玉姫稲荷神社という境内末社も祀られている。

 

 綱敷天神社御旅社は、もともと本社の近くにあり梅塚天神と呼ばれていた。明治時代の初めごろ現在の場所に移転。祭礼や神輿渡御の際の神様の休憩所である御旅「所」ではなく御旅「社」と称するのは、臨時に設けられる御旅所とは違い、常に祭神が祀られる場所であることを意味する。

 

 御旅社にお参りしたのだから、次は本社へ参拝だ。ということで綱敷天神社の本社を目指す。本社は御旅社から1キロほど南に離れていて、ちょうど中間に位置するのが歯神社なのだ。