■ホタテの絵馬と穴の開いた祈願碑

 

姫嶋神社

多くの願いが込められた「帆立絵馬」。

画像:Toyotsu, CC BY-SA 4.0 , via Wikimedia Commons

 姫嶋神社では、この貝殻を絵馬とする。帆を立てて進む船のような形で泳ぐのが、「帆立貝」という名の由来だ。そのホタテを絵馬にすることで、奉納した人の新しいスタートも順風満帆に進むようにという願いが込められているのだ。

 

 帆立絵馬に囲まれている石碑が、神武天皇遥拝所にある「はじまりの碑」。神武天皇は初代天皇であることから「はじまり」と名付けられたという。また、はじまりの碑は祈願所でもあり、ルールにのっとった祈願方法がある。

 

 まず、本殿に参ったあと授与所で帆立絵馬と「断ち玉」を授かる。絵馬に目標や願い事を書き、断ち玉に祈願成就のために断ち切らなければいけないことを念じる。そして、念じた断ち玉が、はじまりの碑の穴を通り抜けるまで投げ続け、無事通り抜けたら帆立絵馬をかけるのだ。

 

■大空襲から再生したご神木が

 

姫嶋神社
風を神聖なものとする姫嶋神社の境内に置かれた「献風台」。

 授与所には姫だるまのおみくじがあり、愛らしいフォルムと表情から女子の人気は高そうだ。本殿前に鎮座する境内末社の楠社の後ろには、1945年6月の大阪大空襲(第四次)で焼けこげた跡の残るご神木がある。

 

 この大空襲の時は、姫島の約4割が被害に遭い神社の社殿なども焼失。ご神木には再生の象徴である蛇神も祀られていることから、「再出発の木」とも呼ばれている。

 

 本殿の右に設けられているのが、風車の並んだ「献風台」。アカルヒメはよい風に恵まれたから無事に日本にたどり着けたとの伝承から、姫嶋神社にとって「風」は大切な存在らしい。

 

その、ありがたい風を注入するための台が献風台。風を入れたいものを置き、備え付けのうちわであおいで風車を回し、風を送り込むとよい。

 

■毎月1日は「やりなおし祈祷」が

 

姫嶋神社
かわいい「姫だるま」のおみくじも人気。

 さらに、毎月1日には特別な祈禱(きとう)として「やりなおし祈祷」も実施。何かをやりなおしたい人だけでなく、「新しいスタートをきる人」「何かを新しく始める人」も祈祷を受けることができる(要予約・有料)。

 

 このように、いくつかの祈願の場が設けられている姫嶋神社。本殿にお参りし、はじまりの碑に断ち玉を投げて絵馬をかけ、ご神木を拝んで献風台で大事な持ち物に風を入れる。そうこうしているうちに、過去に対してウジウジとこだわっていた心がスッキリと晴れてくるはずだ。

 

「やりなおし」にご利益があるというのは、自分の心の持ちようが変わること。気持ちが変われば、新しいことにチャレンジしやすい。姫嶋神社のアカルヒメは、そんなことを教えてくれているに違いない。