■血糖値で耳が光るセンサって?
センサということでは、わが国でも東京大学竹内昌治研究室で「血糖値に反応して耳が光る」という奇天烈な実験が進行中だ。
「耳が光るってどういうこと???」
と思うだろうが、発端は糖尿病患者の問題だった。重度の患者は日に数回、血糖値を測る必要があるのだが、指などに針を挿し採血して測定するので結構面倒。しかも、血糖値は変動が激しいため、正確なデータが取りづらい。
常時モニタするのが一番いいのだが、血管に挿しっぱなしで血糖値をモニタする装置は維持管理が難しい。
そこで、竹内教授らは血糖値の変化に反応して、明るさが変わる特殊な蛍光繊維を使ったセンサを開発。それをマウスの耳に埋め込み血糖値をモニタすることに成功した。血糖値が上がると耳が光り始めるのだ。これも立派なインプランタブルデバイスだ。
■SF真っ青なレンズが開発中!
さらに、医療の枠を越えIT技術と融合したインプランタブルデバイスを利用する実験も進んでいる。
たとえば、「スマートコンタクトレンズ」というマイクロチップを埋め込んだコンタクトレンズがある。業界最大手のメニコンと米・Mojo Visionが共同開発を行なっている「Mojo Lens」がそのひとつだ。
直径0.5mm、ピクセルピッチ1.8μmの超小型モニタを備え、加速度計やジャイロスコープ、磁力計なども装備、視線の動きに合わせて現実の視界に映像をインサートし、視線でコンピュータ操作を可能にするなど、SF映画真っ青の先端技術なのだ。
また、視覚に障害がある人に、レンズ厚をフレキシブルに変えて常に最適な視力を確保する。あるいは、酸素透過率を調整して疲れ目を防ぐと言ったことも研究中だ。
■イーロン・マスクが超人類を構想
そして、インプランタブルデバイスの行きつく先は脳だ。
脳とネットワークを融合させ、脳の処理能力をコンピュータ並みに拡張する。あるいは、自分の意識をクラウド上に保存し、脳を損傷した時のバックアップにしたり、死後にAIにバーチャルな人格を構成させ、ネットワーク上で不老不死を実現したり、といったことも考えられている。
こうした技術で機械と融合し「超人類」を生み出そうという思想を「トランスヒューマニズム=超人間主義」と呼ぶ。トランプ新政権入りで話題のイーロン・マスクも賛同者の一人だ。
彼らの考える究極の世界は、脳とITの融合を通じて、人間の社会生活がメタバースへ移行すること。ほとんどの欲望はネット上でかなえられるので、現実の社会活動は最低限に抑えられ、エネルギー消費も激減。環境が守られ、地球と人間が調和した世界が実現するのだそうだ。
環境を守るために現実を捨てようというのだから、陰謀論者も思いつかないぶっ飛んだ思想である。バカと天才は紙一重というが、理想論も極まるとまるでディープステートの陰謀そのものになってしまうのだ。