■巨大地震は人工の兵器だった?

巨大地震が起こるたびネットやSNSで飛び交う「人工地震」のデマだが……。
(写真はイメージ)画像:AdobeStock(生成AI画像)
大きめの地震が発生した後につきものなのが、SNSでよく現れる「人工地震デマ」だ。
「これは何者かが『地震兵器』で引き起こした人工地震だ!」
という、いわゆる陰謀論の一種。その“犯人”は外国だったり、悪の秘密結社だったり、日本だったり、なぜか筑波大学だったりもする。「地下に核兵器を埋め込んで発生させた!」という主張が多いが、もちろん、たいていは鼻であしらわれていく。

ちなみに、東日本大震災級の地震を核兵器で起こそうとしたら、地下20キロほどに広島型原爆を数百発は仕掛けなければならない。地下掘削の世界記録は、旧ソ連が20年かけて到達した約12キロ。東北攻撃のため、数十年前からコツコツ準備していたのかと考えると、ご苦労すぎて頭が下がる。
■実は大戦中にも人工地震の噂が

人工地震や地震兵器のきな臭い噂は、実は戦時中にも囁かれていた。
(写真はイメージ)画像:AdobeStock
ただし、人工地震デマの歴史は意外と古い。なんといまから80年以上前、太平洋戦争中の1944年にはすでに囁かれていたのだ。
この年は、6月にB-29の本土空襲が始まり、マリアナ沖海戦で海軍は惨敗し、10月のレイテ沖海戦で空母部隊は全滅するという、日本軍の劣勢が決定となった時期だ。敗戦が秒読み段階に入ったころといっても誤りではない。
そんな時期に、人工地震の陰謀論が広められようとした。しかも、その首謀者は米軍だ。
■大地震を予告した米爆撃機のビラ

日本中を爆撃したB29爆撃機。だが、爆弾以外にも恐るべきものを投下していた。
画像:Public Domain via Wikimedia Commons
米軍爆撃機のB-29がバラまいたのは、なにも爆弾だけではない。日本人向けのビラ(チラシ)も日本中にまかれていた。ウソで固められた大本営発表しか知らない国民に、本当の戦況を知らせて戦意を失わせるためだ。
達者な日本語で書かれ、写真やイラストもあるビラを、日本軍当局は必死に回収した。しかし、当然のことながらすべては回収できず国民の手へと渡り、人から人へと密かに伝えられていく。
そして、そのなかの「No2048」には、衝撃的な情報が記されていた。なんと、そのビラは人工地震の予告状だったのだ──。
■3秒で街を破壊する米国式地震

そこには炎の街を逃げ惑う市民のイラストと一緒に、次のよう文言が記されていた。
「一九二三年諸君の國に大損害を及ぼした彼の大地震を記憶してゐるか、米國はそれに千倍する損害を生ぜしめる地震をつくり得る」
1923年の地震とは関東大震災のこと。つまりこのビラは、「関東大震災の千倍の地震を起こすぞ」と脅しているのだ。しかも、この地震は「2トン半から4トンの包み」で起こし、2~3秒以内に街を破壊する米国式地震だと書かれていた。まさしく人工地震による攻撃予告なのだ。
1944年から45年にまかれたというが、発見場所は不明で戦後の捏造疑惑もある。だが、偽物だとは言い切れないのもまた事実だ。なぜなら、このビラが撒かれた前後、本当に日本を関東大震災級の地震が襲っていたからだ……。