昔から海外旅行好きのあいだで語られる都市伝説は数々ある。たとえば、人がこつ然と姿を消した、謎の犯罪集団が日本人を狙っている、などなど。なかには、いま話題の「ミャンマー外国人大量監禁事件」のように、現実の事件だったものもあるが、今回もタイに出張中のカワノアユミが、日本人女性から耳にした恐ろしい話をお届けしよう。

 

 

カンボジアに向かった女性たち

 

はしゃぐ女性バックパッカー

初めてのアジア旅行。気分がアガッて冒険したくなったユウカさんは……。

画像:AdobeStock

「これは私の友達が初めてアジアを旅行したときの話なんですが……」

 

 バンコクで長期滞在者や旅行者が集まった飲み会で、長くバンコクで暮らしている女性Aさんが、ふいに語り出した。これは彼女の友人、ユウカさん(仮名)が十数年前にタイを一人旅していたときの出来事である。

 

 ユウカさんは大学生の頃、当時流行っていたバックパッカーに憧れ、タイを訪れた。バンコクやアユタヤを巡り、すっかり旅に慣れた彼女には、新たな目標があった。

 

「陸路で国境を越えてみたい」

 

 その話に興味を示したのは、バンコクの安宿で知り合った日本人旅行者、ミカとアヤ。二人とも大学の休暇を利用してバックパッカーをしており、カンボジアへ向かう予定だった。

 

 意気投合した3人は、数日後、バスで13時間かけてカンボジアのプノンペンへ向かった。

 

 

■ナイトマーケットで誘う声が…

 

プノンペンのナイトマーケット

プノンペンのナイトマーケット。10年前はもっと薄暗かったそうだ。

画像:AdobeStock

 プノンペンに到着した頃には、あたりはすっかり暗くなっていた。街を流れるトンレサップ川の向こうには、わずかなネオンが灯っている。3人はホテルにチェックインし、ナイトマーケットに向かうことにした。

 

 ナイトマーケットが近づいてきたその時——。

 

「こっちじゃない、あっちだよ」

 

 不意に誰かがそう言った。

 

プノンペンのナイトマーケット
ナイトマーケットに向かう道すがら、ふいに聞こえた声は……。

 ユウカさんは疑いもせず、その声に従い別の道へ進んだ。だが、歩くにつれて周囲は次第に賑わいも途絶えていき、人の気配がなくなっていく。

 

「……ねえ、ここ変じゃない?」

 

 ミカが不安そうに呟く。ナイトマーケットは確かに反対方向だったはずなのに、気がつけば荒れ果てた空き地のような場所に迷い込んでいた。その時——

 

薄暗い空き地に立つ不気味な人影
ナイトマーケットに向っていたはずが、薄気味悪い空き地に出てしまったユウカさんたち。そして、そこには……。 画像:AdobeStock/FireFlyで作成(AI画像)