■“何か”にあの世に引きずり込まれ

首の頸椎を2カ所も折る大事故。意識不明の重体で緊急搬送された栗林さんだが、屋根から落ちる直前、“何か”が自分の身体を引っ張る感覚がしたそうだ。
「首からグッと後ろに引っ張られて……あっ! と思った次の瞬間、“あの世”にいました。実は私、落ちた直後に1回死んでいるんですよ。景色は覚えていないけど、そこでひとりの女性に会いました。田宮の元カノの冬美さんです」
「冬美さん」とは、田宮さんが長く付き合っていた女性。ただ、栗林さんの事故の2年前に亡くなっていた。
「冬美さんとは田宮を通して交流があったものの、そこまで仲が良いわけではありませんでした。でも、あの世で彼女が目の前に立っていて、『私が死んでから、田宮のことをずっと守っていてくれてありがとう。アンタはまだこっちに来たらあかん。戻らなあかんよ』って……」
「え?」と思った次の瞬間、栗林さんの意識は現実世界に戻った。本来なら全身不随で寝たきりになっていてもおかしくない重傷。にもかかわらず彼は、奇跡的な回復を遂げた。
■今も田宮さんを守る存在とは?

証言者の田宮さんを見守ってきた存在、それは…… (写真はイメージ)
画像:shutterstock(生成AI画像)
「冬美さんは『田宮のこと、ありがとう』って言ってくれたけど、私のほうこそ彼女に感謝しなければいけません。首にボルトを入れることにはなったけど、大きな後遺症もなく回復できたのは、間違いなく彼女のおかげだと思ってます。
それに不思議なことに、私が入院しているあいだに、元妻も離婚に応じてくれて。あれだけ離婚を渋っていたのに、あっさりと……」
落下事故は元妻の生霊が起こしたものだったのか。霊媒師の言う「助けてくれる女性」とは、今世では冬美さんのことだっただろうか。栗林さんは「知らないほうがいいこともある」と、霊媒師のもとには再訪していないらしい。
冬美さんが会いに来た――……その話は田宮さんも初耳だったそうで、取材中、彼は「そっか、あいつが……」と声を詰まらせていた。
「実は、冬美が死んでから、僕の家の人感センサーが勝手につくようになったんです。誰もおらへんのに、誰かが通ったようにライトがつく。冬美が守ってくれてるんかな……」
そう言うと、田宮さんはしばらく沈黙し、ゆっくりと視線を遠くへ向けた。まるで、そこに冬美さんの存在を感じているかのように。