■ゾンビが生まれる社会的背景が共感を呼ぶ
「Kゾンビのもう一つの特徴は、ゾンビの誕生や発生の理由がわかりやすく描かれていることです。それによって社会的な葛藤が高まるドラマが生まれやすくなっています。
『今、私たちの学校は…』のストーリーにも社会的、現代的な要素が盛り込まれています。韓国では若干批判の声もあるようですが、「セウォル号」事件を連想させるシチュエーションや社会の矛盾に対する皮肉、何より登場人物たち皆がそれぞれ抱えている事情、その背景にある根深い社会の問題には普遍性があります。それゆえ、韓国のみならず、世界中の国や幅広い層の共感を呼んでいるのでしょう。
いっぽうで、過去のKゾンビには登場しなかった小さい子供のゾンビやユーチューバーの描写などは新鮮で、エンタメ作品として細部まで完成度が高くて楽しめます」(尹氏)
最後に、Kゾンビが気になっているという人に向けて、おすすめ作品や関連作を上げてもらった。
「外せないのは、やはり冒頭で上げたドラマ『キングダム』シーズン1&2、映画『新感染』シリーズ2作。あと、ユ・アインとパク・シネ出演の映画『#生きている』(Netflix独占配信中/2020年)は、集合住宅が舞台で現代のデジタル社会の怖さも盛り込まれていて面白いです。
ユ・アインといえば、『新感染』のヨン・サンホ監督が原作を手がけたコミックを自ら実写化したドラマ『地獄が呼んでいる』(Netflixシリーズ/2021年)にも、新興宗教団体の代表という重要な役どころで出演しています。『地獄が呼んでいる』の正体不明の何かによって人々が地獄に堕ちるという設定は衝撃的で、Kゾンビの世界に通じる恐怖とスリリングさが味わえます」(尹氏)
“ジャンルもの”という括りには収まらないポテンシャルを秘めたKゾンビ作品に、これからますます注目が集まりそうだ。