当初、いついかなるときも冷静なキャラかと思って観ていた『ペーパー・ハウス・コリア:統一通貨を奪え』のユ・ジテ(1976年生まれ)扮する通称「教授」だが、途中から意外な人間味を見せ始める。そんなところも含めてミステリアスな彼の魅力を、主演映画を通して見てみよう。
■若かりしユ・ジテのベスト作!『春の日は過ぎゆく』(ホ・ジノ監督/2001年)
韓国映画の名作『八月のクリスマス』(1998年)に次いで、日本で高く評価されているのが同じホ・ジノ監督作品『春の日は過ぎゆく』だ。
サウンド・エンジニアという見栄えのする仕事に就いているが、純朴な青年サンウ(ユ・ジテ)が年上のラジオPDウンス(イ・ヨンエ)と出会い、たちまち恋に落ちる。家庭環境が複雑で人の心の痛みがわかってしまう彼は、一度愛したら脇目もふらないタイプだ。
しかし、離婚経験のあるウンスは恋愛に対してドライだった。幸せな時間を過ごしたのも束の間、サンウのまっすぐな思いがウンスには負担になっていく。
筆者の周りではこの映画がユ・ジテのベストだと言う人も少なくない。とくに、ウンスから避けられ始めたサンウが半ばストーカーと化してからの迫真の演技には、同情、いや胸を痛めた人が多い。
印象に残っているのは、二人が初めて江原道の田舎町に竹林や川の音を録音しにいったときの食事シーン。サンウが雑穀飯をすくったスプーンをそのまま海苔に押し付け、海苔ごとひと口に頬張る姿が、彼の無邪気さを象徴していた。とても可愛らしいので、ぜひ見直してほしい。