■カンヌ映画祭グランプリ作『オールド・ボーイ』(パク・チャヌク監督/2003年)
『オールド・ボーイ』(2003年)は、日本の漫画『ルーズ戦記 オールドボーイ』(双葉社刊)をベースに韓国で映画化され、カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞した作品だ。監督のパク・チャヌクは今年のカンヌ国際映画祭でも『別れる決心(原題直訳)』(パク・ヘイル主演)で監督賞を受賞している。
主人公デス(チェ・ミンシク)を監禁したウジン(ユ・ジテ)のキャラが怖すぎて、『ペーパー・ハウス・コリア』でも比較的温厚な教授が突然ウジンのような男に変貌するのではないかと気が気でなかった。
チェ・ミンシク演じる動の恐怖とユ・ジテが演じる静の恐怖の激突は今も色あせない。20年も前の映画だからと敬遠せず、ぜひ観てほしい。また、ユ・ジテの声の美しさが特に際立つ作品なので、それも聴きものである。
■ユ・ジテが格好悪いダメ男を演じた『女は男の未来だ』(ホン・サンス監督/2004年)
先月、全20話を完結した韓国ドラマ『私たちのブルース』のイ・ビョンホンが好例だが、筆者は美男子がダメ男を演じ切る作品に弱い。
映画ではまず『純愛譜─じゅんあいふ─』(イ・ジェヨン監督/2000年)で、だらしない町役場職員を演じたイ・ジョンジェを思い出す。そして、それに匹敵するのがホン・サンス監督『女は男の未来だ』(2004年)で有名大学講師ムノを演じたユ・ジテだ。
ユ・ジテ主演映画史上、もっとも格好悪い彼が観られる。まず、本作のユ・ジテは『オールド・ボーイ』のウジンと同一人物とは思えないほど太っている。どんな美男子も太ったらダメになることを、身をもって証明している。かけたパーマが中半端に伸びたような髪型もダサい。
ダメなのは外見だけではない。本作のムノは小さな嘘ばかりつく。髪型を変えて現れた女性にデリカシーのない言葉を吐いたり、行為のあとの女性に「すね毛が多いね」などと言ったりする。教え子たちとの飲み会ではセクハラまがいの発言をする。教え子の一人と行為に及ぶために選んだ宿がこれ以下はないくらいの安宿……。枚挙に暇がないが、そこはホン・サンスの世界。男優のダメっぷりがひとつの見せ場になっている。一度見るとクセになる。映画の場面を反すうしているうちに、筆者も久しぶりに観たくなってしまった。
なお、この映画はダブル主演と言ってもいいキム・テウのダメっぷりも凄まじい。韓国的美男2人の人間味が存分に味わえる貴重な作品である。
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